メニュー

ダイキン工業が海外生産品の最適供給へ新システム導入

2018.11.15

ダイキン工業(本社・大阪市北区、十河政則社長)では、海外で生産された空調関連品の最適供給を実現するため、輸入コンテナのステータスを可視化するシステムを構築した。在庫僅少機種を含むコンテナやフリータイムの期限が近付いているコンテナの情報を関係者が共有することで、倉庫では当該コンテナのデバンニングを確実に優先的に行い、不要な移送を防ぐほか、納期厳守や販売機会ロスの回避にもつながる。主要港でコンテナドレージがひっ迫する中、倉庫でのデバン予定や本数を通関業者が早めに分かれば、ドレージの手配の準備を前倒しでき、車両を確保しやすくなる。

空調関連輸入品の進ちょく状況を見える化

ダイキンでは、国内生産品の国内販売だけでなく、中国やタイ等の海外工場で生産した製品を輸入して販売しており、全国内販売のうち海外生産品は物量ベースで一定の割合を占めている。輸入港は阪神港、京浜港が主体でこのほか名古屋港、広島港、博多港も利用。エリアごとに通関業者を起用している。

海外生産品の輸入に関しては従来、倉庫へのデバン依頼、倉庫からのデバン日時決定等の情報がファクスやメールでやり取りされ、関連部門間の情報共有やコンテナ情報の紐付けが十分でなかった。デバン予定やコンテナのステータスが分からないため問い合わせが多く、ムダな移送の発生やデバン日の調整が円滑に行われないケースもあった。

そこで、通関業者の泉洋港運(本社・神戸市中央区、篠田晃司社長)、物流情報システム提供のエクサス(本社・神戸市中央区、杣田良隆社長)の協力により、すべての空調関連輸入品の進ちょく状況を物流委託先も含めて全社的に見える化する新たなシステムを開発。「Web Forwarder」として、17年12月に導入した。

既存システムになかった新たな機能として、デバン日など作業の進ちょく情報をシステム上で開示。在庫僅少機種を含むコンテや、フリータイムの範囲内で最適な優先順位をつけてデバンするための情報共有が可能になる。また、在庫システムや船舶動静システムと連携することで事務工数の削減も目指した。

移送指示判断やドレージ手配準備の前倒しも

システムの運用範囲は海外の港を出発してから日本の倉庫受け入れまでとし、物流業務に即して工程を細分化。海外拠点から送られてきた船積み情報を基点とし、ステータスごとの情報をシステムに追加入力。船舶動静は自動的に取り込める。システム画面でデバン予定・実績等を表示でき、帳票・明細もダウンロードできる。

画面上の「デバン期限日」を見れば、関係者間でどのコンテナを優先してデバンしてほしいかの伝達が容易になり、倉庫側も優先コンテナがどれかすぐに分かるため、デバン計画を立てやすくなる。また、時間帯まで含めた「デバン予定日」の情報入力により、確定情報だけでなく先の入庫予定も分かるため、移送指示が必要かどうかを判断できる。

なお、仮のデバン予定日時を倉庫が入力し、確定した時点で倉庫が1クリックすると、倉庫から通関業者に「ドレージ依頼」のメールが送られる。デバンの最終「確定」はだいたい3日前だが、「予定日」として先の情報が分かることにより、通関業者はドレージ会社への輸送依頼を余裕を持って行え、ドレージ会社も車両を回しやすくなる。

デバン日程の再調整の情報伝達工数を削減

今回のシステムの導入により、デバン日をはじめ関係者間での各種問い合わせ工数が削減。全国の機種ごとの入庫予定を一括で閲覧できるため、移送依頼についても取捨選択し、ムダな移送を削減。「デバン期限日」の登録により、倉庫への情報伝達が確実で早くなり、顧客への早期の納期回答や販売機会ロスの低減につながる。

従来は手作業で作成していた倉庫別のデバン予定表をシステム化したことで、各倉庫でのデバン予定表の作成が不要になった。また、デバン予定が表示されるため、各倉庫の時間帯ごとのデバン負荷が分かるようになり、デバン倉庫の振り分けや日程を組む際に参考にできる。

このほか、船舶動静情報とのデータ連携により、台風などで船の到着予定日に変更があれば、早いタイミングで関係者に一斉に配信され、デバン日程の再調整にかかわる情報伝達工数を削減。システムから出力された入庫計上伝票に印字されたQRコードをバーコードで読むと在庫システムに情報が自動転送されるようにし、手入力をなくした。

システムを計画・管理の強化やKPI管理に活用

ダイキンでは今年度、輸入物量が前年比約130%と増加し、酷暑による在庫僅少の多発により、シーズン前は各倉庫でのデバン対応に苦慮することが想定されていた。加えて、6月の大阪北部地震、9月の台風21号で在庫品へのダメージ、倉庫建屋への被害でデバン能力が制限されたが、同システムの運用が功を奏し、乗り切ることができたという。

具体的には、受け入れ倉庫が登録したデバン日時情報を各部門が見ながら、その時々の商談・在庫状況に合わせてデバン優先順位を入れ替えたり、本来の受け入れ倉庫の被災に伴う代替倉庫への振り替え指示等をシステムで行い、災害時でも綿密でスピーディーな対応を実現できたという。

現在、物流会社も含めて100を超えるユーザーが同システムを利用しているが、今後は船積み以前の発注情報からのデータ連携と可視化、また、入庫までのリードタイムなどに関するKPIを設定し、管理に活用していく方針。第1ステップではデータを蓄積し、第2ステップでデータの活用・分析を目指す。

システムの二次開発では、月ごとのデバン必要本数に対する各倉庫での作業の進ちょくや全コンテナのデバン優先度を可視化する計画。デバン進ちょくの遅れの要因抽出や「デバン期限日」の遵守率の把握、改善にも役立てていく。本船入港予定日の遵守率も見える化し、船社の選定や運賃交渉にも活用していく。
(2018年11月15日号)


関連記事一覧