タカラスタンダードが高回転な物流体制へ改革を推進
タカラスタンダード(本社・大阪市城東区、渡辺岳夫社長)では、トラックドライバー不足の中で商品の安定供給を維持するため、高回転な物流体制構築に向けた改革を推進する。サプライヤーと連携し、パレット納品への切り替えやASNデータ(事前出荷情報)の活用による入庫の効率化を実現。最新の物流センターは、トラックの回転率にこだわった設計・運用でドライバーの待機時間の削減につなげている。今年度から本格化した鉄道輸送では、貨物駅のコンテナ蔵置機能を活用することで、物流センターの入庫の平準化にも役立てている。
全国17ヵ所に工場、5ヵ所に主要物流センターを配置
同社では全国17ヵ所(関係会社を含む)に工場を配置。滋賀物流センター(滋賀県甲賀市)、鹿島物流センター(茨城県神栖市)、福岡物流センター(福岡県鞍手町)、関東物流センター(埼玉県加須市)、東北物流センター(宮城県名取市)の5ヵ所に主要物流センターを構えている。
基本的にはひとつの工場で生産するのは特定の商品であり、各工場で生産した商品を5ヵ所の主要物流センターに出荷し、そこから各施工現場に届ける。直送すると輸送距離が長くなる場合には、大型トラックで中継拠点となるデポに持ち込み、そこで2t車に積み替えて施工現場に配送する。
幹線輸送は工場~物流センターがメインだが、工場間、物流センター間での移動もある。業務統括本部の明楽仁志物流課長は「幹線輸送、デポからの二次配送を問わず、トラックの確保は厳しい状況にある。幹線輸送では九州向け、二次配送では物量のボリュームが多い関西、関東といった都市圏でとくに厳しさを感じる」と説明する。
パレット納品、ASNデータの活用で入庫時間を短縮
同社がドライバー不足の解消に向け、注力している取り組みのひとつが、物流体制の“高回転化”だ。物流センターでのトラックの待機時間を短くし、回転率を向上させることで、ドライバーの長時間労働の改善に寄与しようというもので、それによりドライバーの安定的な確保につなげる狙いがある。
その一環として、まず物流システムを一新。全国の幹線輸送の登録車両を可視化し、ルートの組み合わせや往復輸送など運行の効率化を図れるようにした。同時に倉庫管理システムもリニューアルし、物流センター側ではトラックの到着時間に合わせた作業計画を組み立てられるようになり、待機時間の短縮につながっている。
一部サプライヤーとの連携による物流改革も推進している。ドライバーの作業負荷の軽減と拘束時間の短縮を目指し、主要なサプライヤーの協力を得て、物流センターへの納品をバラ積みからパレット納品に切り替え、ドライバーの手荷役から倉庫のフォーク作業に変えたことで入庫時間を大幅に短縮できた。
さらに、入庫検品にASNを活用。入庫時に事前出荷データをハンディターミナルで現物と照合することで入庫処理が完了するため、従来のように、トラックからの荷下ろし後の納品書と現物の照合、事務所での入庫処理の必要がなくなり、その間のドライバーの待機ロスが解消された。
L字型、3面バースを採用、出荷スピードが向上
“高回転化”をコンセプトとした物流センターも新設。2017年5月から稼働した鞍手工場隣接の福岡物流センター(延床面積約2万4000㎡、鉄骨造り5階建て)は高床式で、L字型バースを採用、トラックの後ろと横と両方からの荷役が可能。3面バースとすることで、入庫と出庫を同時に行えるため効率的だ。
2階以上のフロアには自動倉庫を設置。従来、自動倉庫の運用は“保管”を主眼においていたが、ピッキングしたものの“仮置き”に使い、トラックの到着に合わせて垂直搬送機で1階に下ろして出荷する。電動式移動ラック、デジタルピッキングも採用し、出荷のスピードが格段に向上した。
新たに4ルートで基幹モードとして鉄道利用
ドライバー不足への対応として、モーダルシフトも推進する。北海道、沖縄向けと一部福岡から関東向けの商品供給には海上輸送を利用してきたが、最近力を入れているのは鉄道輸送だ。トラックが満載にならない物量や、リードタイムの制約が少ない輸送を主なターゲットとし、トラックと鉄道の“併用”を進めている。
福岡工場から関東物流センターおよび東北物流センターへの出荷では、従来から鉄道を使っていたが、今年度から新潟工場から福岡物流センター向け、三島工場から福岡物流センター向け、大阪工場から東北物流センター向け、北陸工場から鹿島物流センター向けでも基幹輸送モードのひとつとして鉄道の利用を開始した。
明楽氏は「トラックを確保しにくい環境になり、安定供給のため鉄道を利用するメリットは従来よりも大きくなっている。長距離輸送でのトラックの確保はさらに厳しくなると予想され、条件が合い、利用できるルートではできるだけ鉄道を積極的に使っていきたい」と話す。
鉄道輸送の副次的なメリットとして「入庫の平準化」を挙げる。例えば、福岡物流センター向けのリードタイムは中1日で、物流センターは月~金の運用のため、木曜、金曜の出荷分はいずれも“月曜着”となり、入庫が集中する。鉄道輸送の場合、貨物駅でコンテナを留置できるため、“火曜日着”に調整できるという。
今後は引き続き、商品の安定供給体制の構築に向け、「サプライヤーとのトラックの往復輸送の拡大やパレット化のさらなる推進、物流センターの“高回転化”などに取り組む」と明楽氏は話す。また、物流品質の維持・向上の観点から、スポットのドライバーに対する荷扱い教育の強化や、一部、梱包仕様の再度見直しも検討する。
(2018年11月13日号)