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運輸問題研究集会を新潟で開催=運輸労連

2018.10.30

全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連、難波淳介中央執行委員長)は23日、第48回運輸問題研究集会を新潟県湯沢町で開催した。昨年は総選挙への対応のため開催を見送ったため2年ぶりの開催となった。

主催者挨拶に立った難波委員長は「いま全日本トラック協会は貨物自動車運送事業法の一部改正に向けて動き出している。『物流二法』の規制緩和で傷んだドライバーの労働条件を改善することを最優先とし、『参入規制の厳格化』『悪質業者の排除』『荷主対策の深度化』『標準的な運賃の公示制度の導入』の4項目からなる規制の適正化を求めているが、総労働時間が短くなっても賃金水準を維持させるための仕掛け・仕組みだと理解している。運輸労連も法改正実現に向けて動くとともに、法改正がなされた後の対応について組織内で議論をしていく」と表明。

その上で「まず取り組むべきはトラック運輸産業を若者が就労を希望する魅力ある職種・職業となるようにすること。そのためには総労働時間の短縮、魅力のある賃金、労働災害のない職場環境を実現しなければならない」と決意を述べた。

署名185万筆の思いは「物流を止めるな」

難波委員長は挨拶の中で、2017年の運輸業界の死亡災害が137人(前年比38・4%増)、死傷災害が1万4706人(5・2%増)に及んでいると報告。賃金についても、17年度の賃金不払い残業の監督指導を受けた対象の20万5235人中、交通運輸系労働者が33・8%の6万9469人と3分の1を占め、是正により支払われた割増賃金総額が全体の半分を占めるなど、労働環境や賃金・労務面で他業界よりも立ち遅れていると指摘。「この状況をもたらした最大の原因は1990年に施行された『物流二法』による規制緩和だ。事業者数は1・5倍に膨らんだが、バブル崩壊やリーマンショックによる輸送量の減少で運賃価格は破壊され、不毛な価格競争が引き起こされた。ドライバーの賃金水準は下落を続け、高齢化と人手不足で物流が止まってしまう事態が目前に迫っている」と危機を訴えた。

さらに、「働き方改革の推進では、上限規制の一般則720時間適用を求めて署名活動を行った結果、目標を大きく上回る185万筆の署名をいただき、そのうち135万筆が荷主企業で働く方々からのものだった。この数字の意味するのは利用者側からの『物流を止めてはならない』というメッセージだ」と強調した。

働き方改革のポイント押さえ、労使協議を

集会では続いて2つの講演が行われた。始めに東京大学教授の水町勇一郎氏が働き方改革関連法の要点について説明。長時間労働の抑制や正規・非正規の待遇格差の是正のため義務化された労働時間把握や差別的取り扱いの禁止などの要件を踏まえ、労使協議を行っていくことが重要だと述べた。

休憩をはさんで、首都大学東京特任教授の戸崎肇氏が運輸産業の現状と今後の課題をテーマに講演。労働力不足や過疎地域の活性化に対応した方策としてシェアリングエコノミー推進の動きが出てきており、「今後は物流分野へのライドシェア浸透も考えられる」とした上で、ライドシェアには「ドライバーの身元保証やプライバシー保護をはじめ、車両の整備責任、運転者の健康管理、相対取引による利用者への負担、不安定な労働形態」など課題が多いことを指摘。また、今後の取り組みでは、労働環境改善や受委託関係の見直しを進めるとともに女性労働力の活用拡大が重要だとした。
翌日は3つの分科会に分かれ、政策課題への対応や組織拡大をテーマに議論を行った。
(2018年10月30日号)


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