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AIロボット「EVE800」で効率化=アルペン/東日本フルフィルメントセンター

2018.06.28

スポーツ用品販売大手のアルペン(本社・名古屋市中区、水野敦之社長)は、今年の4月1日より、EC物流拠点を、プロロジスパーク春日井からプロロジスパーク千葉ニュータウンに移転し、「東日本フルフィルメントセンター」として稼働を開始した。

新センターでは、従来の約2000坪から約3500坪への増床に加えて「移動棚式ピッキングシステム」のAI物流ロボット「EVE800」を導入し、EC物流の効率化を進めていく。現状は約3500坪の使用だが、近い将来はワンフロアーの全て、7000坪をEC物流の全国拠点として運営していく予定だ。

EC売上高比率10%が目標

思い切った増床とロボット導入の背景には、同社の「売り上高EC比率」を現状の3%程度から10%に伸長させていく経営戦略がある。自社サイトを含めて現在7つのECサイトでの販売に加え、SNSを活用したマーケティングを展開中で「年率で約40%の伸びを続けている中、倉庫のキャパシティアップと在庫管理の向上により顧客満足を高めていくため、最新の設備による効率的な運営をする転換期にあった」(サプライチェーン・ロジスティクス部長 河内宏之氏)と説明する。

さらに「今後の労働市場を考え、できるだけ人手に頼らないシステムが重要。広大な倉庫内を歩き回ることなく〝定位置で作業に専念できるシステム〟が我々のニーズに合致した」(河内氏)と話す。

導入はアッカ社との物流業務提携

AIロボットの「EVE800」は、中国のギークプラス社で製造、中国では既に3000台以上が稼働している。国内では、日本法人のギークプラス(佐藤智裕社長)が窓口となり、同施設の5階でフルフィルメント事業を展開する、アッカインターナショナル(加藤大和社長)が日本で初の導入事業者となる。
今回の導入は、アルペンとアッカ社との物流業務提携の中、ロボットと制御システムはアッカ社が投資し、アルペンは取り扱い点数に応じてロボット使用料を支払うスキームとなっている。

「EVE800」を56台導入

同社が入居するのは、1階フロアー。商品SKUは、約10万点を数える。現状の3500坪中の約6割の面積、SKUにして8万点が「EVE800」の稼働スペースとなり、56台のロボットと870本の移動棚(幅1220×高さ2400×奥行き1020㎝)そしてピッキング及び入庫を行う、8ヵ所のワーキングステーションで構成される。

また、同社では「EVE800」のアルゴリズムを変更。棚を3列並べても、中の棚を取り出せるようにしており、保管効率を極限まで上げている。
「EVE800」のゾーン以外は、ゴルフクラブなどの長尺物、スポーツ飲料など賞味期限のあるものが並ぶマニュアルピッキングゾーン。同社らしく卓球台が作業台となる梱包ゾーン。そして30坪程の写真スタジオを併設、ECサイト用の写真撮影を随時行っている。

導入から2カ月、入庫のスピードは倍に

「EVE800」の作業手順は、ワーキングステーションでの、作業者のディスプレイ操作から始まる。操作に従い「EVE800」が必要な棚をワークステーションまで運び、ピッキングまたは入庫を行う。

ピッキングの場合、商品が棚のどの部分に格納されているか、ディスプレイに表示される。作業者は表示に従いピッキングを行い、スキャナーで読み取り、LEDランプの点灯に従い、梱包箱に投入する流れとなる(入庫は概ね逆の動作となる)。

システムのアテンドにより、未習熟の作業者でも作業が可能で、一連の作業中にチェック機能も内包、誤出荷も極めて少ない設計だ。
稼働して2ヵ月弱なので、効率化は〝まだこれから〟とした上で「生産性に関しては、入庫作業はマニュアル時の倍、出庫もマニュアル時の同程度となっている。作業人数に関しては、生産性向上に応じて、今後3割以上の削減を予定している」(サプライチェーン・ロジスティクス部 マネージャー 濱中龍一氏)と話す。

今後の効率化に関しては「フリーロケーションの棚は、溜まってくるデータを基に、AIが棚位置の最適化(走行距離の短縮)を行う。同時に、作業者の慣れも進んでくる」(濱中氏)。加えて「棚への格納の仕方、『EVE800』とマニュアルピックの〝商品の振り分け〟もまだまだ最善ではない。各データを分析し、継続的な改善を実施していく。習熟が進めば生産性にして初期の4倍程度は期待できる」(濱中氏)と話す。

「EVE800」を庫内搬送にも

倉庫のレイアウトは、市場の変化に併せて変わってくるものだ。特に同社のように、移り変わりの激しい「BtoC」市場であればなおさらだ。
「固定的なシステムでは変化の激しい市場で競争できない。そういった意味で、同システムの高い柔軟性も導入の理由だ。現状をスタート段階と位置づけ、今後も更なる変更や改善を進めていく」(河内氏)と話す。

同センターでは、現在マニュアルピッキングに振り分けられている商品も、今後は、可能な限り「EVE800」での扱いに切り替えていく予定だ。
また、現在入庫とピッキングにだけ使用している「EVE800」だがピッキングゾーンから梱包のゾーンまでや、梱包ゾーンから出荷バースまでの庫内搬送での使用も想定している。「EVE800」は文字通り800㎏重量までの搬送が可能で、11型パレットや様々な梱包容器を上に積むことが可能だ。また、現状は床のQRコードを読み取り動いているが、内蔵のカメラによる「セルフマッピング機能」により、QRコードのない場所で自由に動く方式も近々可能になるという。

近い将来は「店舗向けセンター」との連携強化

同センターでEC物流の効率化を進める一方、同社では、至近に店舗用のセンターを集約する予定がある。庫内の物流管理の考え方としては、EC物流センターと同様で、柔軟に変更が可能なシステムで、できるだけの省人化を目指す。

「店舗向けセンターとECセンターの在庫を一元管理し双方からの在庫引き当てなどの連携や、波動に応じての『EVE800』の共同利用も考えており、変化と波動に柔軟に対応できるロジスティクスの構築を目指していく」(河内氏)と抱負を語る。
(2018年6月28日号)


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