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丸和運輸機関が低温食品事業で新規案件拡大へ

2018.06.05

丸和運輸機関(本社・埼玉県吉川市、和佐見勝社長)は今期以降の成長戦略として、物流事業の原資となる“人財”採用を強化しながら、低温食品物流事業における新規顧客の開拓を進め、2020年までに同事業の売上高を500億円に引き上げる。合わせて、昨年6月からスタートした米大手通販会社を荷主とするラストワンマイル当日配送事業も、配送車両と受託エリアをさらに拡大させ、20年の目標に掲げる車両1万台体制と事業売上高850億円の達成を図る。和佐見社長は「(物流業界では)人手不足で新規案件にチャレンジできないことがほとんどであり、こんな時こそがチャンス」として事業拡大への意欲を示す。

低温食品物流事業では今期、営業強化と集中投資を行う。具体的には食品スーパーマーケット向けに物流を含めた総合的な経営利益支援を提案する「AZ-COM 7PL」を中核に高付加価値サービスを提供。物流センターの開設計画も、17年3月期こそ “谷間”であったことから低調だったが、今期は7月に宮城県で食品スーパーマーケットの物流センターが稼働するなど、複数の拠点新設を見込む。新設センターは開設後半年間は利益化が難しいが、既存センターで収益を高めてフォローしていくとした。

また、生協物流では今年2月にコープみらいの配達事業を輸送会社2社から譲受し、9月からは新設子会社のNS丸和ロジスティクスとして、都内で200台の車両を個配事業に供給する。丸和運輸機関では既に京都や滋賀、北陸などでも生協物流の実績を持つ。なお、NSの由来について和佐見氏は「日本生協の頭文字を用いた」と説明した。
低温食品物流では「今後、日本のトップ企業になることで、海外にトライするチャンスにもつながる」として海外事業展開も視野に入れる。また、九州発首都圏向けをはじめとした農産品の輸送では、自社開発の12ftクールコンテナによる鉄道輸送にも力を入れていく。

ラストワンマイル当日配送事業は現在約1500台を運行するが、車両体制の増強に向けて、新しい起業家モデル「Quick Ace(クイックエース)」と、「AZ-COM丸和・支援ネットワーク(AZ-COMネット)」のパートナー企業を拡大。1万台体制時には全体の55%をクイックエース、30%をAZ-COMネット、15%を丸和運輸機関の正社員が賄う計画だ。庸車の拡大に向けては、個建て運賃であることから、配達エリアに車両を効率配置して1台の1日当たり配達個数を現在の100個から150個まで増やす仕組みを構築する。

荷主である米大手通販会社との料金交渉については「現在は物量が欲しい状況」であるとともに「実績を持ってからの方が値上げを認めてもらえる」との考え。配送センターは東京23区を中心に200拠点体制とする計画にあり、今期も積極的な開設を進めるが、既存センターの7~8割は黒字化しており、これらのセンターの収益を新センターへの投資に回すことで「現状でも適正な利潤を保てる」とした。

人財確保については「採用の仕方を見直した」と和佐見氏。採用の基準・ルールを明確化するとともに、採用後の指導や育成も充実させ、入社後6ヵ月間は週1回、5年間は月1回の面談で定着率を高める。さらに、本人の意向を聞きながら、入社後10年間で3~5ヵ所の異動を行い、活躍の場を変えることで働きがいを創出する。新卒採用は、前期実績の195人に対し、今期は300人を予定する。

AZ-COMネットは5月30日現在で897社が会員だが、今期中には1500社へ増やす。当初は今期、2000社を目標としていたが、17年3月期に会費を見直すとともに取引のない会員企業約150社を休会扱いとしたことで、会員数は一時的に縮小した。長期的には3000社、3万台を目指す。

18年3月期は料金改定や現場改善で増収増益

18年3月期の連結業績は、売上高743億5900万円(前期比10・7%増)、営業利益45億600万円(2・4%増)、経常利益47億5200万円(3
・1%増)、純利益は30億4400万円(1・1%減)だった。庸車費の増加などコストアップ要因もあったが、食品物流や医薬・医療物流などで既存取引先の料金改定が進んだことや、現場業務のKPI管理による利益追求、日次決算の徹底などが奏功した。

19年3月期の連結業績は、引き続き、既存顧客の料金改定を進めることもあって、売上高847億9000万円(前期比14・0%増)、営業利益56億3000万円(24・9%増)、経常利益58億円(22・0%増)、純利益38億7000万円(27・1%増)の大幅増益予想。和佐見社長は「一連の施策で、今後も売上高2桁増とROE15%を維持していく」と述べた。
(2018年6月5日号)


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