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【行政レポート】パレット規格・運用標準化で「共同PF」構築へ

2024.06.27

国土交通省はパレット標準化促進への最終提言を取りまとめた。パレット化できるすべての貨物でパレット化を促進するため、標準規格を「11型」とし、標準的運用方式を自社所有ではなくレンタル方式と定めた。運用についてはレンタルパレットの使用を基本とし、将来的には「11型」標準パレットの共同供給・回収を複数のレンタルパレット会社が連携して行う共同運用プラットフォームを運用すべきとした。発着荷主、運送事業者・倉庫事業者、レンタルパレット事業者などが実施すべき取り組みのロードマップも提示した。ただ、最終提言では、「11型」ではない業界標準のパレットが既に普及している全業種に対しても「将来的には標準仕様パレットの採用を期待する」と踏み込んだため、一部の業界からは懸念の声も出始めている。

パレット使用コストは関係者で相応に分担

標準仕様パレットの規格は、平面サイズ1100×1100㎜、高さ144~150㎜とした。JIS規格の定める材質・強度を保ち、最大積載質量を1tとする。仕様は両面使用形または片面使用形とし、二方差しまたは四方差しとした。紛失・流出防止や貨物の追跡を図るためタグ・バーコードの装着が可能な設計とする。

運用については、自社保有パレットの紛失・流出が荷主にとって大きなリスクとなることから、レンタルを基本とし、さらに複数の荷主向けに供給・管理・回収を共同で行えるようレンタルパレット会社が共同プラットフォームを運用すべきとした。回収作業は契約に基づくものとするが、共同PFの本格化に至る前段階では、回収時のパレット仕分け作業を着荷主が行うべきとした。

また、現状ではレンタルパレット事業者と契約している発荷主のみが利用料を負担しているが、パレットを利用することで倉庫事業者や着荷主も効率化のメリットを得られることを踏まえ、レンタルでの共同利用の場合、利用料は発荷主、倉庫事業者、着荷主など物流関係者間で、受益程度を考慮しながら適切に負担すべきとの考えを示した。発荷主のみに負担がかかるあり方が変わることで、レンタルパレットの利用可能性が拡がった格好だ。なお、コスト負担のあり方については今後の検討課題としている。

26年度に共同プラットフォームの社会実装

パレット標準化実現に向けたロードマップも提示した。発着荷主、運送事業者、倉庫事業者、レンタルパレット事業者、パレットメーカー、行政はそれぞれ、標準パレットの活用促進に向けて目標やスケジュールを共有し、連携して自動化・省力化など物流の効率化に取り組みを推進することとした。それに伴い26年度までに実施する項目を明記。発着荷主は、パレットの仕分け作業や回収作業を行う主体を明確化し、適切なパレット利用を行えるようにする。運送事業者と走行事業者には、自社における標準パレットの導入推進や、荷主に対して標準パレット使用を積極的に提案していく。レンタルパレット事業者とパレットメーカーは標準パレットについて、仕様・運用方法・コストメリットなどを荷主などに周知していく。行政は各種施策や予算措置で標準パレットの普及を後押しする。具体的には、標準パレットの動態管理システムを導入するレンタルパレット事業者向けに導入費用を補助するほか、荷主がパレタイザーや自動倉庫を「11型」に対応したものに改修する費用を補助する。

一方、レンタルパレット事業者の取り組みでは、効率的な配給・管理や回収を行うため、複数事業者が参画する共同プラットフォームづくりに向け、検討や実証事業を推進する。そのうえで標準パレットの一定の普及が見込まれる26年度以降は、共同PFを社会実装すべきとした。共同PFの実現に向け、共同回収拠点となるデポや、共同回収を円滑化する設備の増設が必要となる場合、国による支援を検討する。

実効性のある取り組みを推進するためのKPIも設けた。パレット生産数量(平パレット)に占める「11型」の割合を22年度の26%から30年度に50%以上に引き上げる。レンタルパレットの現存保有数量(平パレット)に占める「11型」の割合を22年度の76%から30年度に85%以上に引き上げる。レンタルパレットの保有数量も大幅に伸ばす。22年度の2651万5728枚を30年度に5000万枚以上と2倍近くまで増やす。併せて、共同回収を実施している拠点数を23年度の42ヵ所から30年度に400ヵ所以上とする。取り組みを実施した成果として、荷役作業に要する時間(1人当たり)を20年度の年間375時間から30年度には315時間に短縮することを目指す。設定したKPIは物流事業者と行政、関係機関が参加する「官民物流標準化懇談会」で定期的に進捗状況を報告することで、取り組みの実効性を担保する。

全業種「11型」統一に対し懸念の声も

22年6月に公表された中間提言では「これからパレット化を図る荷主に対し『11型』を推奨する」としており、「11型」以外のパレットが普及している業種に標準パレットを〝強制〟しない意図を示していた。それから2年後の最終提言では、大型貨物や既に業界標準のパレットが普及・活用されている場合、標準パレットの導入が「当分の間困難な場合」だと認めた一方、「設備改修等のタイミングも勘案しつつ、将来的な標準仕様パレットの導入を期待する」と明記。時期をみながらだが、パレット化可能なすべての荷物で「11型」を使用する方針を示した。

これに対し、一部の業界からは物流効率化の妨げとなることを懸念する声も出ている。「11型」以外のパレットが利用されている業界をみると、自動車関連、冷凍冷蔵食品、薬品などで「12型」(1000×1200㎜でアジア共通サイズ)、ビール・酒類で「9型(Pパレ)」(900×1100㎜)、化学品で「14型」(1100×1400㎜)が普及している。一例としてビール業界の場合、国内出荷量の99%を占める4大メーカーがPパレを使用し、物流効率化や環境負荷低減の取り組みを30年以上継続している事例もある。

荷主にとって現状とは異なるサイズのパレットを導入することは、設備改修や輸配送・保管体制の見直しなど、サプライチェーン全体に影響が及ぶことになる。また、倉庫事業者でも「12型」に適した保管システムを構築している場合、既存設備の改修が必要となり、新たな設備投資やオペレーションの見直しにより物流効率化が停滞するとの懸念も出ている。最終提言の打ち出した方針を各業界がどのように受け止めるか、成り行きが注目される。
(2024年6月27日号)


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