日本サニパック、倉庫間在庫移送を内航コンテナ船にシフト
伊藤忠商事グループでポリ袋・ゴミ袋の開発・製造・販売を一貫して手掛ける日本サニパック(本社・東京都渋谷区、井上充治社長)では、「SDGs物流」の取り組みを加速させる。海外自社工場から国内倉庫への製品の輸入をパレット化し、デバンニング作業の負荷を軽減。輸入で使った国際海上コンテナを国内倉庫間の在庫移送にも継続利用し、輸送手段を内航コンテナ船に切り替えた。在庫移送後の空コンテナにパレットを積んで海外工場に返送し、空コンテナのドレージを一度も発生させない“究極のエコ物流”の仕組みを構築した。
環境と働く人にやさしい「SDGs物流」
同社はインドネシアの自社工場で製造された製品を輸入し、国内市場に供給しており、物流センターを計6ヵ所(北海道、東北、関東、中部、関西、九州)に配置。BCPの観点から、需要家に近いエリアにストックポイントを分散させる一方、起用物流会社を日本トランスシティ(本社・三重県四日市市、安藤仁社長)に一元化することで、各種物流施策のスムーズな展開を可能としている。
2020年に創業50周年を迎えたのを機に、日本サニパックではコーポレートブランドを刷新し、「きれいな地球と、きれいな心を。」を新たなスローガンとして掲げた。石油由来原料のポリエチレンを活用する企業の責任として、リサイクル原料による循環型の製品やCO2削減効果の高い製品(写真)を供給するとともに、物流では、地球環境と働く人にやさしい「SDGs物流」を推進している。
海外とRFIDパレットをリターナブル運用
具体的な取り組みのひとつが、長年の懸案だった輸入製品のパレット化。従来、40ft(ハイキューブ)コンテナで輸入し、1コンテナに2000ケースがばら積みされており、倉庫でのデバンニング作業の負担が大きかった。積載率の低下やパレットの導入・管理費用などコストがネックとなって難航したが、物流現場の労働環境改善は「経営を持続するために必要」との経営トップの判断でパレット化に踏み切った。
インドネシアの工場でパレタイズ設備を用意し、現在、東北をのぞく5ヵ所の物流センター向けにばら積みからパレット輸送に切り替えた。パレット化により工場のバンニング作業を5人から1人に削減。国内倉庫でのデバンニング作業も従来は3~5人で2時間かかっていたのが、1人で30分程度で完了するようになった。省力化・省人化だけでなく、国内デバンニング費用の削減にもつながっている。
パレットは40ftコンテナに平置きで縦9列積載できる「110㎝×130㎝」サイズを使用。伊藤忠グループとその出資先スタートアップが持つモバイルソリューションを活用し、パレットにRFIDを装着し、パレットの入出荷・在庫管理を効率化し、盗難・紛失リスクを軽減。トランシィの協力を得て、「パレットが倉庫に320枚溜まった時点でインドネシア工場に返送する」というシンプルなルールでリターナブル運用されている。
内航コンテナ船利用で陸上輸送距離を削減
もうひとつの取り組みが、内航コンテナ船へのモーダルシフト。従来、神奈川県大和市から北海道石狩市の物流センターへの在庫の移送は、大洗港(茨城県)からフェリーを利用していたが、免税コンテナの国内転用手続きにより、インドネシア工場からの製品の輸入で使ったコンテナを在庫の移動に継続利用。輸送手段もフェリーから、井本商運(本社・神戸市中央区、井本隆之社長)が運航する内航コンテナ船に切り替えた。
ドライバーに時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」により、長距離輸送は敬遠されると見込まれる。倉庫から最寄りの横浜港を使えるようになったことで、両端の陸上輸送距離を52%、CO2排出量を22%削減。兵庫県尼崎市から福岡市の物流センターの在庫移送については従来、約600㎞を陸上輸送していたのを、神戸港~博多港間を内航コンテナ船にシフト。陸上輸送距離を94%、CO2排出量を77%削減した。
国際海上コンテナを国内貨物の輸送に使うことで、従来の20tトレーラより積載可能な容積が拡大したことも、パレット化を後押しした。在庫移送に利用したコンテナはリターナブルパレットの返却、つまりインドネシア工場向けの輸出に“再々利用”し、国内で空コンテナの返却を一度も行わない完全なラウンドユースを実現した。一連の取り組みは、日本物流団体連合会(物流連)の「第23回物流環境大賞」で「特別賞」を受賞した。
今後は、インドネシア工場の原料輸入で使ったコンテナを日本への輸出、国内在庫移送、パレット返送まで継続的に循環利用する構想もある。国内では、同業他社や伊藤忠商事グループとの共同物流も推進。国内物流センターから納品先への配送でもパレット化に挑戦し、すでに市場にある荷役機器を応用し、輸出入用で使うパレットから、国内流通用パレットに効率的に積み替えるオペレーションも検証中だ。
(2022年7月7日号)