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長期・スポットのトラック運賃が上昇

2022.02.08

素材や生活必需品の値上げが相次いで発表される中、トラック運賃も長期契約・スポット運賃ともに上昇の兆しが出てきた。新型コロナウイルス感染症の拡大が落ち着いた秋以降、荷動きに回復がみられ、軽油価格の高騰が続いていることから、値上げ交渉したトラック事業者が増えているとみられる。ただ、オミクロン株の拡大による一部工場の稼働低下や消費の冷え込みから景気が減速し、今後は荷動きの鈍化も懸念されており、軽油価格の高騰分の価格転嫁についても、他業種に比べ遅れが目立つ。

秋以降は上昇傾向が顕著、12月は高水準に

日銀が発表した12月の企業向けサービス価格指数のうち、「道路貨物輸送」の指数は「111・3」と3ヵ月連続上昇し、「111」台に浮上した。推移をみると、最初の緊急事態宣言が発令された後の2020年6月を“底”に、緩やかに上昇基調が続いた。21年は9月以降、上昇が顕著となり、コロナ感染拡大の落ち着きによる人流増加と年末需要が重なった12月は、20年12月以来の「111」台となった。

一方、スポット運賃の水準の指標となる、求荷求車情報ネットワーク(WebKIT)の成約運賃指数をみると、12月は前月比6pt増、前年同月比5pt増の「128」だった。21年は6月に「100」台に落ち込んだものの、7月以降は前年を上回って推移している。10月以降は上昇基調にあり、12月は同月としては10年以降で3番目に高い水準に達している。

燃料費高騰で経費増、運賃交渉は苦戦も?

昨年秋は新型コロナウイルス感染症の感染状況が改善し、荷動きが回復した。大阪府トラック協会の調査によると、10~12月期に輸送量が前年同期比で「増加」した割合は3割を超えた。ただ、燃料費の高騰により、売上が増えても経費増で減益となっている事業者も3割にのぼる。「運賃・料金の水準」は「横ばい」が8割弱で、「上昇」は2割にとどかず、運賃交渉に苦戦している事業者も多いことがうかがえる。

足元では軽油の店頭価格が150円となり、トラック事業者の経営を圧迫している。ただ、帝国データバンクの調査では、「運輸・倉庫」で仕入れ単価が上昇した割合は60・0%であるのに対し、仕入れ単価が上昇してかつ販売単価も上昇した企業の割合は19・2%にとどまった。仕入れ単価と販売単価の上昇率に、40・8ptのギャップがあるなど、他業種と比べ価格転嫁が進んでいない。

「明示的な協議なし」の価格据え置きにもメス

東京都トラック運送事業協同組合連合会が昨年7月末に実施した「運賃動向に関するアンケート調査」の結果によると、84・1%の事業者が現在収受している運賃・料金について「低い」と回答していた。直近半年間の運賃・料金の収受の変化については87・1%の事業者が「特に変わらない」とし、中小事業者の運賃水準は伸び悩んでいる傾向にある。

なお、12月の「外航貨物輸送」のサービス価格指数は「126・0」、「国際航空貨物輸送」は「161・9」。需要に対して供給がひっ迫し、海上・航空運賃単価の高騰が指数を押し上げている。貨物運賃の「陸低・空海高」傾向は、トラック運送業界は価格交渉力のない小規模事業者が圧倒的多数を占めること、事業者の数が多いため過当競争に陥りやすいことが理由と考えられる。

ただ、値上げを後押ししそうな動きも出てきた。軽油価格の高騰がトラック事業者の経営を直撃している中で、公正取引委員会では、エネルギーや原材料価格などの上昇を取引価格に反映しない取引は、下請法上の「買いたたき」に該当するおそれがあるとし、「明示的な協議なしの据え置き」にもメスが入る。これにより荷主側からトラック事業者への運賃値上げについての“打診”が増え、値上げにつながる可能性もある。
(2022年2月8日号)


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