倉庫シェアリングの動きが本格化
「倉庫シェアリング」の動きが本格化してきた。コロナ禍での巣籠もり需要を背景にeコマースが拡大しており、倉庫スペースの新規需要が旺盛。一方で、物流不動産のスペースを借りたものの、「思うように荷物が集まらず」スペースを持て余している企業の集荷ニーズもある。また、冷凍貨物、危険物といった特殊な貨物の保管先を探したいという要望もみられる。国土交通省も物流DXの一環として「倉庫シェアリング」のスキームに注目しており、倉庫とユーザーをマッチングし、スペースのムダをなくすプラットフォームサービスの存在感が増しそうだ。
冷蔵冷凍温度帯や輸送の手配も=souco
2019年6月から企業間の倉庫シェアリングを可能とするプラットフォームサービスを開始したのが、物流スタートアップのsouco(本社・東京都千代田区、中原久根人代表取締役)。空きスペースを抱える倉庫と、スペースを必要とする企業の情報を集約し、スポット案件を中心に小ロットから1000坪単位での倉庫利用をマッチングする。
21年7月には荷姿がパレット・カゴ台車・段ボールなどユニットロード化された荷物について、全国一律料金での従量制保管サービスの提供を開始。翌8月からは冷蔵冷凍温度帯の保管プランを追加した。21年12月現在、倉庫事業者と荷主のアカウント登録数は2000超となっている。
有力企業との提携も加速し、21年7月にはトランコムと資本業務提携した。トランコムの求貨求車サービス全国約1万3000社のパートナー企業とsoucoとの連携を行い、輸送の手配も可能な物流サービスのプラットフォームへと拡張。同12月には凸版印刷と資本業務提携を結び、物流DX分野における事業創出を目指している。
最短3日で利用開始、寄託案件に特化=三菱商事
三菱商事(本社・東京都千代田区、垣内威彦社長)は昨年5月、倉庫シェアリングサービス「WareX」を正式リリースした。寄託案件に特化した、荷主と倉庫のマッチングプラットフォームで、倉庫検索から入出荷まで全てオンラインで完結。荷主が急に倉庫が必要になった場合にも最短3日で利用できる“スピード”も魅力だ。
倉庫を探したい荷主は「WareX」に無料登録することで全国の倉庫を検索可能。倉庫の立地や単価を確認したうえで、利用を希望する場合は案件ごとに「WareX」と個別契約を結ぶ。「寄託契約」となるため、荷主は利用した分だけ保管料、作業料を支払い、物流費を変動費化できるメリットがある。
パレット単位のほか、カゴ車やケースの荷姿による保管・荷役が対象で、登録画面には社名や空きスペースの面積は開示されない。倉庫会社と荷主は直接契約せず、倉庫会社の契約締結先は三菱商事の子会社である三菱商事ロジスティクスとなる。入出荷依頼を含めて荷主と倉庫会社との間の連絡は「WareX」のプラットフォームを介して行う。
仲介手数料不要のマッチングサイト=押入れ産業
押入れ産業(本社・東京都港区、森田浩史社長)は荷主と倉庫のマッチングサイト「ロジセレクト」を立ち上げた。押入れ産業加盟店以外も自社の施設情報を掲載できる。荷主と物流会社との直接契約・直接取引により、仲介手数料は不要で、サイトへの掲載料も低価格に設定。自社のニーズに合った倉庫(賃貸・寄託)を荷主自らが探し、直接コンタクトできる。
「倉庫(スペース)を貸したい」「物流業務を受託したい」物流会社が倉庫施設を登録し、関心を持った荷主や物流会社が直接コンタクトできる仕組み。掲載料は1年目は無料とし、2年目からは基本掲載料が月額6600円(税込み)、1拠点追加ごとに月額1100円(同)がかかる。押入れ産業本部は問い合わせや進行管理は共有するが、マッチングには関与しない。
マッチングサイトの運営を通じ、中小物流会社の広域営業を支援し、荷主との直接取引を促進。今後、倉庫だけでなく、運送(機能・車両・拠点)に関するコンテンツも追加する予定。さらに、物流会社に物流資材やマテハン機器、情報システムを販売したいベンダーもサイトに登録できるようにする。
危険物倉庫に特化、各種規制に適合=日陸
危険物倉庫に特化した倉庫シェアリングサービスを開始したのが、日陸(本社・東京都千代田区、戸木眞吾社長)。危険物倉庫の空き情報と荷主のニーズをマッチングさせる「AnyWareHouse」の本格運用を1月から開始した。荷主の保管開始までのリードタイムを短縮し、危険物倉庫のアセットの有効活用を支援する。
危険物倉庫の場合、消防法をはじめとした各種規制に適合した倉庫に保管しなければならないため、危険物に関する専門知識を持った担当者がマッチングさせる必要がある。日陸では、協力会社の危険物倉庫の空き情報と、荷主が預けたい貨物をマッチングさせるシェアリングサービスを開発した。
協力会社は空き情報と各種条件(対応可能な貨物や流通加工など付帯サービス)を登録し、荷主は貨物の種類や希望する付帯サービスなどを登録。いずれも登録料は無料。これまでの再寄託のスキームは変えず、日陸が元請けとなり、荷主の貨物やニーズを精査したうえで、最適な協力会社の危険物倉庫に再寄託する仕組みだ。
賃貸借ニーズが対象、オンラインで完結=イデアロジー
倉庫を「借りたい」ユーザーと「貸したい」オーナーのニーズをマッチングさせるプラットフォームを構築したのが、イデアロジー(本社・東京都新宿区、坂本哲朗代表取締役)。26日に、最適物件の検索から契約までをオンラインで完結する物流施設オンライン検索契約システム「ア・ソコ(à sôko)」の運用を開始する。
日本全国の大型賃貸物流施設約1000物件超を地図上でデータベース化。ユーザー向けに独自開発したAIによる最適な物件提案、比較分析レポートの提供を行う。物件検索から契約締結までのプロセスを6つの体系に標準化することでユーザーもオーナーもオンライン上で効率よく最適な物流施設を借りたり、貸すことが可能になる。
今後は、VR内覧や現地内覧日程調整、見積依頼から契約締結(電子署名)、賃借後の転貸や寄託物件の募集とマッチングサービスまでを無料で利用できるようにする。22年度上期に各施設内のオペレーションを最適化するシミュレーションシステムを、23年度上期には、オペレーションの検索もサービスとして提供する考え。
(2022年1月13日号)