「告示」見直しへ、10月から実態調査=厚労省
厚生労働省は7月29日、改善基準告示の改正に向けて輸送モード別に検討を行うトラック作業部会(部会長=藤村博之・法政大学教授)の第2回会合を開催した。10月から開始する、新型コロナ感染症の拡大以降の状況を反映したトラックドライバーの労働実態の調査項目を決定。調査結果は年明けのなるべく早い時期に集約・精査し、第3回作業部会で報告。これを踏まえて議論を加速し、22年12月までの改正を目指す。
使用者側は〝フレキシブルな適用〟を要望
昨年実施済みの労働実態調査は2019年が対象でコロナ禍以前の実態だった。そのため現状を正確に判断する観点から、今回は今年3月から9月の間の通常期と繁忙期を調査対象とする。10月からアンケート方式と一部ヒアリングにより実施し、対象となる事業者は1410事業場(うち257事業場は前回からの追跡調査)、ドライバーは8460人とした。
会議には使用者側委員として全日本トラック協会副会長の馬渡雅敏氏、日本通運執行役員の赤間立也氏が出席。労働組合側委員では全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連)中央副執行委員長の世永正伸氏、全国交通運輸労働組合総連合(交通労連)トラック部会事務局長の貫正和氏が参加し、改正点に関する意見交換が行われた。
全ト協の馬渡委員はコロナ禍により貨物輸送量が減少したことで労働実態が変化していると指摘した上で、収束後の需給の変化に対応し、多様な運行実態に合わせた改正が必要との考えを示し、「長距離輸送と近距離配送との違いや荷種ごとに異なる運行実態を踏まえるべき。改正の方向性としては、一律に規定せずに、フレキシブルな適用が求められる」と指摘した。
その背景として、天候や道路渋滞をはじめ、荷主の指示による荷待ち時間の発生など使用者側では管理できない事態により拘束時間が超過することがあることを指摘。これに対し、作業部会の副部会長を務める首藤若菜・立教大学教授は「例外や特例措置の範囲を広げすぎると法令の意義が失われる」との見解を示した。
〝拘束時間3300時間を原則とすべき〟と労組
運輸労連の世永委員は若年層を業界に呼び込むためには、ドライバー職に年960時間の時間外労働を上限とする「別枠」扱いから、年720時間の一般則に近づける必要性を主張。また、改善基準告示の拘束時間は時間外労働だけでなく休日込みの時間で計算しており、その考え方を変えるべきではないことを改めて強調した。
馬渡委員は「荷主の指示で荷待ち時間が発生するなど、これまでの商慣習が拘束時間の超過につながるケースがある。運送事業者だけに罰則付きの上限規制が適用され、指示を出す荷主に責任はないと言えるだろうか」と疑義を呈した上で「制度的に荷主への指導が行われるよう、行政や国会議員に対して要望している」と述べた。
(2021年8月3日号)