パレット標準化を最優先にソフトも=国交省
国土交通省は17日、物流分野の標準化を推進するため、農林水産省、経済産業省、日本物流団体連合会(物流連)、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)と連携し、官民物流標準化懇談会(座長=根本敏則・敬愛大学教授)を設立し、第1回会合をオンライン方式で開催した。今後は同懇談会の下に個別の標準化を議論する分科会を設けることとし、第1弾の取り組みとして、パレットの標準化に向けた議論を行う分科会を秋までに立ち上げる。分科会での議論を通じ、数多くの種類があるパレットを一定程度まで標準化することで物流効率化を促進。手荷役作業の多い荷主業界へのパレット導入促進についても議論する。
「物流DXと標準化が車の両輪」=赤羽大臣
初会合には赤羽一嘉国交大臣が出席し、省を挙げての意欲的な姿勢がうかがえた。冒頭、挨拶に立った赤羽大臣は「現在の物流は担い手不足という大きな課題に直面しているが、トラックドライバー不足により物流が滞る事態が発生してはならない」と述べ、17年の貨物自動車標準運送約款の改正や18年の貨物自動車運送事業法の改正によりドライバーの労働環境改善に取り組んできたと説明。加えて、コロナ禍により非接触・非対面の新たなビジネスモデルの構築や、カーボンニュートラルなど、物流を取り巻く環境変化への対応が重要だと明言した。
その上で15日に閣議決定された総合物流施策大綱(2021年度~25年度)が柱に挙げた物流DX(デジタルトランスフォーメーション)と物流標準化について「この2つを車の両輪として着実に推進していく」とし、「物流事業者のみならず製造・販売を行う事業者の理解を得て標準化を実現すべきで、懇談会の議論を通じ、一定の方向性と結論を得た上で、具体的な標準化推進策を実施する」と表明した。
第1回会合には、事業者関係からは物流連会長の渡邉健二氏、日本倉庫協会理事長の米田浩氏、全日本トラック協会副会長の馬渡雅敏氏、日本通運代表取締役副社長の堀切智氏、ヤマトホールディングス代表取締役社長・社長執行役員の長尾裕氏、SGホールディングス取締役経営企画担当兼IR室長兼経営企画部長の川中子勝浩氏、日立物流代表執行役副社長の神宮司孝氏らが参加。
荷主・経済団体からは日本経済団体連合会(経団連)専務理事の根本勝則氏、日本商工会議所社会資本整備専門委員会委員長の荒木毅氏、経済同友会幹事の栗島聡氏、全国農業協同組合連合会参事の金子千久氏、日本ロジスティクスシステム協会専務理事の橋爪茂久氏、日本規格協会業務執行理事の内田富雄氏ら参加。学識経験者では根本座長のほか、立教大学教授の高岡美佳氏、流通経済大学教授の味水佑毅氏が出席した(東京女子大学の二村真理子氏は今回欠席)。小売や卸の業界団体にも今後の議論によっては参加を要請する。
パレット分野、早期に成果出しやすい
意見交換では、物流連の渡邉会長が「運送業務における手荷役を減らすことが最重要で、パレットの標準化に優先的に取り組むべき」と提言。経済同友会の栗島氏が「(T11型パレットが活用されていることから)パレット分野では比較的早期に標準化の成果を出しやすい」と指摘した。それを受け、ヤマトHDの長尾氏が自社で推進するロールボックスの活用などが「標準化によるビジネスモデルになり得る」と示唆。日通の堀切氏もパレットの標準化を優先する方針に賛同した。
懇談会では秋頃までにはパレット標準化を検討する分科会を設立。標準化に必要な要件などを調査し、時期は未定ながら実証実験などを行う。さらに、パレット以外でも標準化を検討していく考えだが、ソフト面での標準化も重要との認識に立ち、情報分野を具体的な検討対象としていく。
締め括りに赤羽大臣が発言し、「手荷役作業は運送事業者が行うことがこれまでの商慣習だったが、本来は荷主の負担」と述べ、商慣習の見直しを提言。また、EC通販などで使われている「送料無料」という表現について「本来、物流にはコストがあり、適切な表現ではないという意識を社会的に共有すべきだ」と指摘した。
(2021年6月22日号)