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「告示」改正へモード別作業部会設置=厚労省

2021.05.06

厚生労働省は4月23日、トラック、バス、ハイヤー・タクシーの改善基準告示の改正を検討する「自動車運転者労働時間等専門委員会」(委員長=藤村博之・法政大学教授)の第5回会合を開催した。今回は各モードの事業者とドライバーを対象に実施した労働実態に関する調査結果の概要と、諸外国でのドライバーの労働時間規制の実態調査などについて報告。ただ、同調査には新型コロナウイルスの感染拡大後の労働実態が反映されていないため、トラックについては今年3月から9月までの期間に再度調査し、その結果を踏まえて改正の議論を進めるとした。具体的な議論はモード別に行うことが適切との判断からトラック、バス、ハイタクに分かれ、作業部会を設置。なお、トラックの第1回作業部会は4月30日に開催した。

連続運転「4時間超」のドライバーが25%

トラックの労働実態をみると、事業者の回答では、繁忙期の1日の拘束時間が「13時間以下」の割合は62・8%だったが、基準を超える「16時間超」も4・3%あった。一方、ドライバーの回答では「13時間以下」は36・8%だったが、「16時間超」は15・0%と事業者の回答よりも高かった。適切だと思う拘束時間は、「13時間超」が事業者で78・9%、ドライバーで67・8%と多数を占めている。

1年の拘束時間に関し、現行の改善基準告示の限度時間である年間3516時間を超えていた割合は、事業者は5・0%と1割未満。告示改正で目安となる年間3300時間未満の割合は70・7%で、3割の事業者で超過していた。

休息期間では、最も忙しかった日の休息期間が「8時間以上」の割合は事業者の回答は71・3%で、ドライバーも68・2%と双方が約7割を占めた。
連続運転時間では基準を超える事例が一定以上みられた。事業者の回答では「4時間以下」が92・1%とほとんどだったものの、ドライバーの回答では64・4%と低く、最も忙しかった日の連続運転時間が、基準を超える「4時間超」だったドライバーは25・1%と4分の1を占めていた。

また、事業者が適切だと思う連続運転時間は「4時間超」が86・8%と大勢。一方、ドライバーは「4時間以下」が30・7%と事業者よりも高かったものの、「4時間超」が65・6%となっており、事業者・ドライバーともに「4時間超」とする割合が高かった。

労組は年間総拘束時間3300時間以内を主張

調査結果の報告を受け、全日本トラック協会副会長の馬渡雅敏委員は「2024年4月から施行される時間外労働の罰則付き上限規制(年間960時間)は法律として決まったことであり、経営者側として非常に重く受け止め、その実現に向け、努力していく」と表明。その上で、ドライバーの長時間労働の要因として待機時間の発生を挙げ、「経営者側が長時間労働にならないように運行指示を行ったとしても、荷主の指示で長時間待機が発生する場合や、これまでの慣習でドライバーが荷降ろしや棚入れまでを行うケースがある。この点について、社会的な認識が広がり、荷主が改善の意識を持つことが重要だ」と強調した。

労組側からは全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連)中央副執行委員長の世永正伸委員が「改善基準告示の改正は、働き方改革関連法によりドライバーが健康に業務を行えるようにすることが趣旨だ」と指摘し、告示の改正では総拘束時間を過労死防止の観点から年間3300時間以内に定めることが必要だと主張した。

「配送」と「長距離」、2つの基準設定を提言

ドライバーの業務内容を踏まえるべきとの論点も指摘された。全国交通運輸労働組合総連合トラック部会事務局長の貫正和委員は「日勤の配送業務と、幹線を担う長距離輸送では、ドライバーの勤務実態が大きく異なっている。今回の告示改正では、業務内容を踏まえ、休憩期間や連続運転時間などで2つの基準を設けることを検討すべきだ」と提言。

それを受け、日本通運執行役員の赤間立也委員は「現行の改善基準告示の規定では、連続運転時間などについて運行実態と合致しにくい部分もある。そのため、今後の改正では、配送や長距離など勤務実態に即した基準とすることは一定の意義がある」との考えを示した。この議論を受け、今後非公開で開催するモード別作業部会において、業務内容別の基準に関して詳細な議論を行っていく。

関連して、馬渡委員は「ドライバーが健康に働けること、安全な輸送を実現することが告示改正の本来の目的だ。改善基準告示が適用されるのは営業用トラックだが、自家用トラックや軽貨物運送の個人事業主などに対しても安全な輸送サービスを担保するため、労働時間について営業トラックと同様の基準を設けるべきではないか。自家用トラックを営業用トラックへ転換する〝自営転換〟も必要だ」と提案。今後の作業部会での議論に持ち越すこととなった。
(2021年5月6日号)


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