“商物分離”で顧客への直送率をアップ=横浜ゴム
タイヤ大手の横浜ゴム(本社・東京都港区、山石昌孝社長)では、販社と連携しながら商品直送率の向上を目指している。販社の営業所を経由せず、“商物分離”を図り、直送率引き上げに向けた物流再編や新たな輸送スキームの構築を推進。昨年から開始したコンテナやトラックの積載率向上策と併せて、一連の取り組みにより、タイヤ物流のコスト削減を実現する。
直送率向上に向け、SPを有効活用
横浜ゴムの物流体制は、「物流企画室」がグループ各社の国内物流から輸出までを管理。コスト削減や新たな施策構築に向けた検討など物流業務の改善に取り組んでおり、実際の物流オペレーションを子会社の浜ゴム物流が担う体制としている。
その中で注力しているのが、顧客への商品直送率の向上だ。現在は地区ごとの保管拠点であるDCから販社のヨコハマタイヤジャパン(YTJ)の各営業所に商品を配送し、そこから営業担当者自らが顧客のもとに商品を配達しているが、効率や労働負担の面が課題となっている。また、横浜ゴムでは全国8ヵ所にDCを構えているが、同業他社と比べてDCの拠点数が少なく、顧客への直送範囲が限られているため、直送分だけを配送するとコストが割高になっていた。
そこで、各営業所に商品を配送する車両に顧客への直送分も混載し、効率的に納品できる配送ルートを構築。さらに、別々に保管している夏物と冬物商品を各地域のSPで共同保管し、SPから顧客に配送する体制とすることで、営業所から納品先に届ける手間を削減し、営業担当者の労働負担軽減につなげている。
直送率30%の達成を目指す
このほかの施策としては、関東エリアにおける物流再編に着手している。従来、関東エリアでは北関東方面をカバーする「上尾DC」(埼玉県上尾市)のほか、上尾DCのバッファ拠点として埼玉県川越市に外部倉庫を構えていたが、グループ資産の有効活用の観点から、上尾DCの売却が決定。上尾DCの機能を埼玉県春日部市の「北関東DC」に移管し、今年1月から稼働を開始している。
上尾DCの売却期限までの間は、川越の倉庫を返却し、上尾DCを春日部のバッファ倉庫として活用。首都圏・神奈川方面の顧客には、YTJの東京の営業所から配送しているため、上尾DCの売却後は、首都圏・神奈川方面への直送率向上に向け、新たな外部倉庫の設置を検討している。
また、関西にはDCを設置していないため、現状では、中部圏から関西エリアのYTJ営業所に商品を届け、各営業所から得意先に商品を納品しているが、今後は、関西エリアにおける直送率向上を目指し、協力会社と連携し、各社のハブ倉庫を活用した新たな輸送スキームの構築を図っている。
タイヤ物流企画室の二宮昭彦室長は「関東エリアでは外部倉庫を賃借し、DCとして活用するため、物流コストが上昇する。直送率向上を喫緊の課題として取り組み、全体10%程度の直送率を30%まで引き上げることで物流コストを削減したい」と方針を述べる。
最適な積み込み方法で積載率4~6%向上
なお、このほか物流コスト削減に向けた取り組みの一環として、昨年来、積載率の改善に注力している。タイヤを配送するトラックや輸出コンテナへの最適な積み込み方法の基準を策定し、各工場の出荷口で標準化されたタイヤの積み込みを徹底している。
二宮氏は「タイヤは大きさや形状が異なるため、トラックの荷台やコンテナのスペースをいかに埋め、最適な積み込みを実践することが重要だ」と指摘。とくに、国内ではトラックドライバーが積み込み作業を行うことも多いため、「標準化した積み込み方法を強いるのは難しかったが、丁寧に説明し、最も効率的なタイヤの積み込みについて、協力しながら改善を進めてきた」と振り返る。基準を策定する前と比べて積載率は4~6%上昇したという。
また、北海道や仙台、中国エリアなどの中規模DCと周辺倉庫間における横持ちの削減も進めている。海外の工場からは40ftコンテナ満載でDCに届けられるため、DCの周辺に外部倉庫を確保し、その結果、DC~外部倉庫間で横持ちが発生していたが、二宮氏は「コンテナを40ftから20ftに変更した。1TEUあたりのコストは増加するが、外部倉庫を利用しないことで、拠点間の横持ちが削減され、輸送時間の短縮や横持ち費用の圧縮につながっている」と効果を説明する。
(2020年10月27日号)