メニュー

輸送量減少で自車優先にシフトか?

2020.05.12

新型コロナウイルス感染拡大による工場の操業停止や飲食店などの休業を背景に、トラック輸送の荷動きが鈍化している。近年、大手・中堅トラック運送事業者は安定輸送の確保やコンプライアンスの強化などを目的に、自車を増強する傾向にあり、輸送量の減少を受けて、自車を優先する動きが強まっているという。長期的にみると、コロナが収束して荷量が回復した際に、傭車を確保しにくくなったり、スポット傭車のコストが上昇する可能性もある。

需給緩み、自車優先で稼働率高める動き

トラックドライバー不足が深刻化する中、トラック運送業界では稼働できる台数が減少。不足分を傭車でカバーすることになるが、ドライバー不足を反映して傭車の運賃・料金の単価は上昇基調にある。こうした傭車費の比率が増加していることが、利益率の押下げ要因のひとつになっている。

大手・中堅トラック運送事業者は近年、運行に占める傭車比率を下げるために、ドライバーの採用強化や正社員化などで自車を強化してきた。しかし、昨秋以降、消費増税や新型コロナウイルス感染拡大でトラック輸送の需給が緩んできていることから、自車を優先に稼働率を上げる動きも出始めているという。
あるトラック運送事業者の経営者は、「近年、大量にドライバーを採用した会社もあるが、輸送量が落ち込んで自車の運行を優先せざるを得ないため、傭車に仕事が回らず、傭車の経営状態は厳しくなる。こういう状況だからこそ、自車を休ませてでも仕事を回さないと、傭車はついてこない」と指摘する。

ここへ来て懸念されているのが、自車を抱えすぎたことによる“安値受注”だ。新型コロナの感染拡大下においても、中長期契約の運賃水準は何とか持ちこたえているようだが、「新規案件では相当安い見積もりも出ている」と報告されている。「いま安い価格に引きずられると、収束した時に大変なことになる」との声も聞かれた。

自車の適正台数・適正人員は永遠のテーマ

「自車の適正台数・適正人員」はトラック運送事業者にとって永遠のテーマとされ、輸送需要が落ち込んでいる時は傭車比率が高いほど固定費を抑えられ、一方、輸送需要が旺盛な時は、傭車比率を低くすることで経営が効率化される。自車と傭車のバランスは各社各様と言える。
全日本トラック協会の景況感調査によると、貨物の再委託(下請け運送会社への委託割合)は2016年中盤から18年にかけて増加基調にあったが、19年以降、荷動きの悪化で低下基調に転じている。コロナを機に、近年の自車強化の動きにどのような変化がみられるか注目されている。
(2020年5月12日号)


関連記事一覧