国交省が運送コストのガイドラインを公表
国土交通省は12月27日、トラック運送サービスの安定的・継続的な提供を実現するため、荷主と運送事業者がコンプライアンス違反を防止しながら運行業務を実施するために必要となるコスト構成や、効率的な運送を可能とする運行事例などを取りまとめたガイドラインを公表した。国交省のほか厚生労働省、経済産業省、農林水産省と共同で取りまとめたもの。今後は各都道府県で開催している「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」や各種セミナーを通じ、荷主と事業者の双方に向け、同ガイドラインの周知を図っていく。
国交省は2016年7月にトラック事業者が適正な水準の運賃・料金を収受できる環境を整備するため、トラック運送事業者・荷主等の関係者や学識経験者および関係省庁から構成される「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」(座長=藤井聡・京都大学大学院教授)を設立。同検討会で具体的な方策を検討してきた。
同検討会での議論を踏まえ、コンプライアンス違反を防止しつつトラック運送機能の持続的確保を図る上で一定のコストが必要となることなどについて荷主と運送事業者の双方の共通理解を促すことを目的に、事業コストの構成要素や運行事例なども含めてガイドラインとして取りまとめた。
ガイドラインでは、運送事業者が安定的・継続的な運送サービスを提供するためにコンプライアンス(法令遵守)が重要であり、その基礎となる改善基準告示の内容について表を使って解説。ドライバーの拘束時間についても、荷物を運んで運転している時間だけでなく、点検・回送運転・荷待ち・荷役・休憩などの時間も含むことを荷主にもわかりやすいように示した。
国交省自動車局貨物課の平嶋隆司課長はガイドラインの冒頭でコンプライアンスの重要性に言及したことについて、「法令遵守による事業経営と安定的で持続可能な運送サービス提供は表裏一体の関係にある」と強調。「荷主が運送業務を事業者に委託する場合にコンプライアンス違反が生じないように」理解する必要性を指摘した。
ガイドラインでは、荷主にもわかりやすいように、イメージ図を活用。高速道路の利用による拘束時間短縮をはじめ、受付予約システム利用による荷待ち時間の短縮や、パレットを活用した機械荷役による荷役時間短縮などを具体的に例示した。
安定的な運送に必要なコストについて、直接費(運送費)として「運行費」「車両費」「ドライバー人件費」「自動車関連諸税・保険料」等、間接費として「一般管理費」「施設費」「事故処理費」「租税公課等」が必要だと説明。コストの割合についても、直接費を100とすると、間接費が約32+αの割合となることを示した。
コスト構成については、検討会の委員の意見に加え、全日本トラック協会(坂本克己会長)によるトラック運送業の原価計算マニュアル・原価計算シートをはじめ、国交省が取りまとめた原価計算の手引き書などを参考にした。コスト割合については中小企業庁が毎年度公表する中小企業実態基本調査の道路貨物運送業の項に基づき試算した。
また、法令遵守を強化するため、違反事業者への行政処分の強化や、改善基準告示違反ではトラック事業者への処分に加え、荷主勧告制度による荷主への勧告(社名公表)や警告を行うことも示した。
(2019年1月10日号)