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ズームアップ 五輪で東京港のコンテナ物流対策は?

2018.10.23

東京オリンピック・パラリンピック会期中の交通混雑削減に向けた「2020TDM(交通需要マネジメント)推進プロジェクト」は発足から3ヵ月が経過し、荷主、物流関係者などの協力団体、参加企業は着実に増えつつある。一方で、東京港の慢性的な混雑は一向に改善が見られず、五輪会期中に東京港発着のコンテナ物流はさらに混乱する恐れがあり、関係者は「運べなくなる危機感」を強めている。こうした中、2年後の五輪を見据え、コンテナラウンドユース(CRU)や内航フィーダーの活用など新たな物流網の構築への動きも出始めている。

東京湾岸エリア、ヒト・モノの動きが活発に

東京都は8月8日、大会公認プログラムとして、「2020TDM(交通需要マネジメント)推進プロジェクト」を発足。交通行動の変更を促して、交通量発生の抑制や集中の平準化などの交通需要の調整を行うことにより、道路交通の混雑を緩和していく取り組みを“宣言”し、協力団体・企業のエントリーを開始した。

物流・流通に関しては、輸送ルートや時間の変更、共同配送の検討、路上荷捌きの抑制、倉庫、コンテナヤードの出入時間調整を提案。消費者に対しても宅配便の受取時間や贈答時期の変更、再配達抑制への協力も呼び掛けた。10月2日現在、プロジェクトへの協力者は23団体、参加企業は179社まで増えた。

競技会場が集中し、ヒト・モノの動きが最も活発になると予想されるのが東京湾岸エリア。東京港のコンテナターミナル周辺道路は慢性的に混雑し、台風の影響もあり直近では青海ふ頭の公共ターミナルの混雑悪化が目立つ。東ト協海上コンテナ専門部会(菊池秀章部会長)も改善を申し入れているが、「現状の改善策は難しい」(関係者)ようだ。

2年後見据え、先行的に東京港の混雑回避の動きも

2年後のオリンピックを見据えた東京港の混雑回避の動きも先行的に出始めている。その手法として注目されるのが、CRUだ。内陸デポをコンテナ発着の起点として活用し、内陸にコンテナを“逃がす”ことで港の混雑の影響を少なくできるため、五輪のTDM対策としても有効と見られている。

サントリーホールディングス(本社・大阪市北区、新浪剛史社長)は4月に始めた茨城港を経由するコンテナでのCRUを夏には東京港経由のコンテナにも拡大。東京港ではオリンピックに向け物流の混雑が予想されるため、CRUの拡大により港に出入りするトラックを減らし、渋滞を緩和する効果も見込む。

物流会社もCRUの体制を整えている。日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は9月1日、コンテナターミナルの混雑による長時間待機やドライバー不足への対応、五輪に向けた東京湾岸エリアでの物流停滞の懸念を背景に、内陸デポを運営する吉田運送(本社・茨城県坂東市、吉田孝美社長)とCRUに関する業務提携を結んだ。

官民一体トライ&エラーを重ね、あるべき姿を共有

TDMプロジェクトにエントリーした企業のほとんどは「検討はまだこれから」(食品メーカー)で、当面は会期中の交通混雑などの情報収集に努めるようだ。ただ、開催まで2年を切り、目下、東京港の混雑がひどくなっている状況で「今から対策を考えなければ、東京港の物流は麻痺する」という見方もされている。

「会期中、東京港に船は寄港できるが、東京港からの輸送網は使えなくなる――という想定の下、代替輸送網を確保する必要がある」と話すのは、ケービーエスクボタ(本社・大阪市浪速区、河上和則社長)の武山義知開発営業部長。東西内陸デポを活用したCRUの実績は国内トップクラスで、TDMプロジェクトでもその知見に期待が集まる。

CRUに加え、新たな輸送ルートの確立も検討している。9月には、茨城ポートオーソリティによるひたちなか港を利用した社会実験に参画した。東京港から内陸部間のドレージを内航フィーダーに“モーダルシフト”し、内陸デポを経由することで往復での実入り輸送を行うもので、実運用への課題を検証した。

ケービーエスクボタの開発営業部海外グループの小島崇コンテナラウンドユース推進チーム長は、TDM対策としてコンテナ搬出の「予約システム」の活用可能性を指摘する。東京港周辺にスペースを確保し、ターミナルから引き取ったコンテナを一時ストックし、そこを基点として道路が空いた時間帯に集中的に内陸との配送を行う――というものだ。

現状の東京港の混雑で「五輪開催時の混雑の状況はある程度想像ができる」と武山氏。東京港発着のサプライチェーンの強化に向け、一過性でなく持続的な対策の必要性を強調する。「港湾局とメーカー、物流会社が官民一体となり対策を検討し、トライ&エラーを重ねた上であるべき姿を多くのメーカーと共有し“本番”を迎えたい」と話す。
(2018年10月23日号)


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