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【ズームアップ】道路貨物運送、大手と中小で格差が拡大

2022.06.09

東京商工リサーチの調査によると、道路貨物運送業者の2021年の売上高は宅配便需要を取り込んだ大手を中心に売上高を伸ばした一方、赤字企業の割合が初めて2割を超えた。大手と中小企業の業績格差がコロナ禍で広がっている。22年1~5月の道路貨物運送業の倒産は合計94件(前年同期比40・2%増)に達し、2月を除き前年を上回って推移している。燃料価格の高止まり、人手不足などの影響で中小運送業者の業績は厳しさを増しており、今後の道路貨物運送業者の動向が注目される。

宅配需要高まるも輸送量は落ち込み

全国の道路貨物運送業者2万6698社の2021年の売上高合計は21兆6823億5700万円(1・1%増)と2年連続増加した。新型コロナ感染拡大による在宅勤務や外出自粛などでEC市場が拡大し、大手を中心に宅配貨物需要が高まった。最終損益が判明した1万5525社の純利益合計は4089億8400万円(6・0%増)となった。

国土交通省が発表した20年度の宅配便実績は、巣籠り需要の増加などで48億3670万個(前年度比約11・9%増)と大幅に増加。宅配貨物運送市場の拡大を追い風に、大手の好調に業績を伸ばしたが、20年度の国内自動車貨物輸送量は2134億1900万トンキロ(15・1%減)に落ち込んでいる。

1社あたりの売上高は減収が続き、大手と中小企業の業績格差がコロナ禍で広がっている。1万5525社中、黒字は1万2155社(構成比78・2%)に対し、赤字は3370社(21・7%)と2割を超えた。赤字企業の構成比は20年が19・0%、19年が15・7%と増加傾向にある。

21年は前年と比べ増収企業が7256社(29・7%)で、20年より9・4%減少した。一方、減収企業は1万690社(43・8%)で、20年より20・9%増えている。売上高別は、最多は「1~5億円未満」の1万3135社(49・8%)。次いで、「1億円未満」が6734社(25・5%)、「5~10億円未満」が3242社(12・3%)と続く。

売上高が「5億円未満」が75・3%を占め、道路貨物運送業の大半を中小・零細事業者が占める。「100億円以上」の244社のうち、1000億円以上は6社にとどまり、大手の寡占化が進む。従業員数別では、「10~50人未満」が1万4483社(54・2%)、資本金別では「1000万円~5000万円未満」が1万4842社(55・5%)で最多だった。

休廃業、解散、M&Aの選択が増える?

道路貨物運送業界は人手不足や燃料費高騰など課題が山積している。20年度のドライバーの年間労働時間は全産業平均の2100時間と比べ、大型トラック運転手は2532時間と432時間も長く、一方で年間所得額は全産業の487万円と比べ、大型トラック運転手は454万円と約7%低い。

5月30日時点の軽油の価格は全国平均小売価格148・2円と7週連続で下落傾向にはあるが、依然として価格の高止まりが続き、経営の負担が大きくなっている。また、荷主と下請運送事業者との適正取引について、中小・零細企業は荷主に対する立場が弱く、適正な運賃・料金の収受が厳しい状況も残している。

時間外労働に年間960時間の上限規制が設けられる「2024年問題」への対応も迫られる。21年の休廃業・解散は全体では減少したが道路貨物運送は459件(前年比0・2%増)と微増となった。経営体力の脆弱化や後継者不在を背景に、倒産に追い込まれる企業や休廃業、解散、M&Aの選択が増える可能性が高まっているという。
(2022年6月9日号)


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