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〝人手をかけない〟物流の実現を目指す=物流連・渡邉会長

2021.04.01

日本物流団体連合会(物流連、渡邉健二会長)は3月25日、第6回理事会を開催し、2021年度の事業計画を策定した。理事会終了後には会見を開き、渡邉会長と田村修二副会長(JR貨物会長)、長谷川伸一理事長が出席した。渡邉会長は「物流の生産性向上を進めるには標準化が重要であることは間違いない。国や関係団体と連携しながら、今こそ標準化を促進する」と強調。次期総合物流施策大綱が近く閣議決定されることを見据え、「物流標準化をはじめ、物流大綱が掲げる政策方針を業界内外に周知・啓発することを目的としたシンポジウムを開催する」と表明した。

サプライチェーン強靭化と物流標準化が焦点

渡邉会長(写真)は、コロナ禍によって物流に生じた変化について「以前から抱えていた課題が、より一層浮き彫りになった」と述べ、「端的に言えば、サプライチェーンの脆弱さと、これまでの物流が〝人の手〟をかけすぎており、生産性が低いという課題が露わになった」と指摘した。

サプライチェーンの脆弱さについては「コロナ禍の最盛期にマスクやトイレットペーパーなど生活必需品の不足や品切れが生じた。これは、いざという時にサプライチェーンを維持するBCPに基づく危機管理が不足していたことの表れではないか」とし、国が中心となって、事業者や荷主の連携体制を強化し、非常時におけるサプライチェーンの強靭化に取り組むことが重要だと語った。

生産性向上に関しては「長期的な労働力不足は明らかであり、人の手をかけない物流を実現していく必要がある。一例を挙げれば、直近では世界的に海上コンテナ不足が生じているが、コンテナの貨物をデバンニングできなくなっているのが要因だ。労働力が不足するとこういう事態が起きる」と述べ、「我が国でも同様なことが起きるのを防ぐため、標準化や規格化を通じて荷役・輸送での機械化や自動化・省力化を促進すべきだ」と強調した。

手荷役削減に向け、パレット標準化が重要

また、「国交省と連携し、今後の物流標準化を促進するため、パレットなど分野横断的に物流標準化を推進すべき項目について調査を行う」ため、経営効率化委員会の下に調査小委員会を設置すると説明。同小委員会では、標準化に向けた現状や問題点を把握し、論点を整理した上で物流業界が行うべき取り組みの方向性を検討する。

パレットの活用による手荷役削減が喫緊の課題となっている現状についても言及。「パレットで輸送した貨物を、倉庫到着時に保管用パレットに積み替えるなど非効率な作業が一部では見受けられる。生産から小売りに至る一貫パレチゼーションが重要である現状は、昔も今も変わっていない」と強調した。また、パレットの利用促進を図るため、国によるパレット配給制度や導入支援制度を設けるべきとの意見が一部にあることについて「国が支給するパレットの場合、自社パレットやレンタルパレットと異なり、回収する意識が若干弱まるなどの課題が生じるかもしれない」と述べた上で、国とも連携しながら〝人手をかけない〟物流の実現を目指し、パレットに限らず、幅広く標準化に取り組んでいく考えを示した。

「物流大綱シンポジウム」を開催

21年度事業では、引き続き、生産性向上に向けた官民の連携を強化するとともに、物流関係団体間での情報共有や連携強化を図る。生産性向上では、国土交通省と連携し、物流標準化の推進に向けた調査を実施する。併せて、新たに策定される次期総合物流施策大綱の推進に向けた協力や連携に重点的に取り組むこととし、物流大綱をテーマとしたシンポジウムを物流連と国交省の連携により開催することを決めた。

人材育成分野では、業界インターンシップや業界研究セミナーを昨年同様に開催し、物流人材の確保につなげる。環境負荷低減の取り組みでは、「物流環境大賞表彰」や「モーダルシフト優良事業者公表・表彰」を引き続き実施。官民連携による「グリーン物流パートナーシップ会議」にも継続して参加する。また、周知・啓発活動にも注力。シンポジウムを開催し、高度な物流人材の育成・確保の重要性を物流業界や荷主業界に向けて啓発することとした。

また、21年度に物流連が発足30周年を迎えることから「物流連30年の歩み(仮称)」を発刊する。
(2021年4月1日号)


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