メニュー

標準運賃、届出は5%弱にとどまる=国交省・秡川自動車局長会見

2021.03.04

国土交通省の秡川直也自動車局長(写真)は2月26日に記者会見を開き、トラックの「標準的な運賃」告示制度に基づく運賃変更届出の現況を発表した。1月末時点の全国の届出件数は2676件で、全国の事業者数5万6000者強のうち4・7%。秡川局長は「全日本トラック協会と連携しながら、荷主と事業者への周知活動を推進し、浸透を図る」とした上で、「標準的な運賃は運輸局に届出をすればそれでよしということではない。荷主と交渉の上、改定した運賃を届け出るという〝基本動作〟を行うことに意味がある」とあらためて強調した。秡川局長の会見の要旨は次の通り。

荷主との交渉なしに運賃改定は実現しない

改正貨物自動車運送事業法に基づくトラックの標準的な運賃の告示が行われたのは昨年4月。その時期が新型コロナ感染症の拡大期と重なっていたため、事業者・荷主間の協議が困難な状況となったのは非常に残念だった。事業者の理解を進めるため、昨年は各都道府県で標準的な運賃に関する啓発セミナーを実施した。引き続き、事業者への周知活動に力を入れていく。

全ト協もあらゆる機会を通じて運賃改定を行い、届出をするよう呼びかけている。その前段として標準的な運賃を参照しつつ荷主と運賃改定の交渉を行い、実際に運賃を引き上げることが重要だ。単に運輸局に届出をすればよしということではない。荷主と交渉し、そこで改定がまとまった運賃を届け出るという〝基本動作〟を行うことに意味がある。

国交省が標準的な運賃を告示したことで自然と自社の運賃も上がっていくと考える事業者があるかもしれないが、そういう制度ではない。事業者は自社の経営状態を分析した上で、荷主との交渉を行わなければ運賃改定は実現しない。経営分析を行うために標準的な運賃を参照していただきたい。
1月末現在、標準的な運賃の告示後、運賃改定届出件数は全国で2676件となった。全国の事業者数約5万6000者強のうちの4・7%に相当する。地域特性もあり、ブロックごとにばらつきがあるが、届出件数の増加が今後加速化していくことを期待している。

荷主に対する周知活動も行っていく。ドライバー不足や2024年4月からトラックドライバーに適用される罰則付き時間外労働上限規制など、トラック運送を取り巻く状況を理解した上で、運賃改定に協力してもらうことが必要だ。標準的な運賃の告示後、荷主団体に書面での協力依頼などを行っているが、コロナ状況下で十分は活動ができていない。4月以降は経済産業省や農林水産省と連携し、様々な機会を活用して荷主の理解を求めていく。都道府県でのトラック輸送の労働環境改善地方協議会の場を活用し、荷主と事業者で最新の状況を共有しながら、浸透を図っていく。

標準的な運賃は24年3月末までの時限措置として制度化されたものであり、一部の事業者から時限延長を望む声があることは承知しているが、時限となるのは3年後だ。いま現在が制度の延長を考慮するタイミングではないと考えている。

過重な附帯作業には荷主勧告適用も

ドライバー時短に向けて輸送品目ごとに改善に取り組んでいる。2月24日に飲料・酒物流の改善検討会を開催した。会合では、荷主の指示による運送以外の各種の附帯作業がドライバーの長時間労働の要因のひとつであり、荷主と事業者は協力の上、この点での改善に取り組む必要があるとの認識が共有された。

運送以外の附帯作業については契約で明確化している場合のほか、商慣行によって無償で行われているケースもある。改正事業法では、荷主は安全運行に対する配慮義務を果たさなければならないと明記している。附帯作業がドライバーへの過重な負担となり、安全な運転業務にも影響を及ぼす場合は、附帯作業を指示する荷主に対し、荷主勧告制度を適用し、改善を要請することとなる。

ドライバーの優先的接種は当面不要

1月22日にトラック、バス、タクシーの3業界から、赤羽大臣に対し、エッセンシャルワーカーであるドライバーへの新型コロナワクチンの優先的接種の要望があった。業界からの要望を受ける以前に、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部に問い合わせていた。厚労省からはワクチンの数量は十分にあるため優先的接種の仕組みを設けた場合、逆に接種の遅延が生じる可能性があるとの回答があった。3業界トップの方々には、その旨を赤羽大臣から説明申し上げた。円滑なワクチン接種を国民的レベルで進めるため、優先的接種は当面不要だと理解している。
(2021年3月4日号)


関連記事一覧