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荷動きは若干の回復も〝2番底〟の可能性?=日通総研短観

2020.11.10

日通総合研究所(本社・東京都港区、青山陽一社長)は4日、2020年度9月調査による企業物流短期動向調査(日通総研短観)を発表した。国内向け出荷量の動向では7~9月の実績が「マイナス59」となり、4~6月実績の「マイナス65」より6pt上昇、10~12月の見通しは「マイナス53」となり、さらに6pt上昇するかたちとなり2期連続で上昇を示した。4~6月実績は1~3月実績の「マイナス38」から27pt低下という急激に下降したのと比べ反転したものの、荷動き好転の目立った材料がないことから、改善は一時的なものにとどまる可能性もある。

Web方式で会見を開いた佐藤信洋プリンシパルコンサルタントは「個人消費の低迷をはじめ、設備投資の伸び悩みや輸出の低調がみられ、景気自体は良くなっていない。4~6月実績の落ち込み方は、リーマンショック後の09年1~3月実績、4~6実績に次いで史上3番目に悪かった。それほどの急激な落ち込み方だったため、例えて言えばボールを落とすと床に落ちて跳ね返るように、反動として若干の改善を示したのだと思われる」と説明。「ここが底で今後は反転するのではなく、2番底を探る可能性もある」と述べ、楽観を許さない状況を指摘した。

消費財卸、食料品・飲料などで落ち込み予想

同調査は2500社を対象に、7~9月の実績と10~12月の見通しを9月初旬時点で調査したもので855社から回答を得た(回答率34・2%)。業種別の荷動き指数をみると7~9月実績と10~12月見通しはともに全15業種がマイナス。7~9月実績のうち、輸送用機械、生産財卸、その他の製造業、木材・家具、消費財卸、パルプ・紙、金属製品など9業種で上昇がみられた一方、精密機械、化学・プラスチック、鋼鉄・非鉄、窯業・土石、食料品・飲料、電気機械など6業種が低下した。また、10~12月見通しでは木材・家具、輸送用機械、生産財卸、化学・プラスチック、金属製品、鋼鉄・非鉄、電気機械など12業種が上昇し、消費財卸、食料品・飲料、一般機械など3業種が低下。消費財卸は「マイナス28」から「マイナス36」と8pt低下、食料品・飲料は「マイナス26」から「マイナス30」と4pt低下しており、生活分野に近いところでの落ち込みが目立った。

全輸送モードで利用動向は改善の兆し

輸送機関(一般トラック、特積みトラック、宅配便、鉄道コンテナ、内航コンテナ・RORO船、国内航空)の利用動向も7~9月実績と10~12月見通しの双方で全機関がマイナスとなった。4月以降、全機関が2ケタのマイナスを示しているのは変わらず、総じて活気が見られない。ただ、推移をみると7~9月実績と10~12月見通しのいずれも全機関で前期より上昇していることから、改善も見込まれる。一般トラックでは、4~6月実績は「マイナス62」、7~9月実績は「マイナス56」、10~12月見通しは「マイナス49」と6~7ptの幅で上昇。特積みトラックは同様に「マイナス59~マイナス54~マイナス47」と5~7ptの幅で上昇を示した。鉄道コンテナは4~6月実績の「マイナス50」から7~9月実績は「マイナス41」と9pt上昇し、10~12月見通しは「マイナス38」と3pt上昇した。

営業倉庫の在庫量(原材料)、同(製品)、保管料の3分野をみると、いずれも7~9月実績、10~12月見通しでマイナスとなった。佐藤氏は「生産が伸びていない中、在庫調整が進んでいることがうかがえる。ただ、在庫調整の結果が生産拡大にそのままつながるとは言えない」と述べ、先行きの不透明さを示した。

トラック運賃はしばらく足踏みが続く見込み

運賃・料金の動向指数をみると、7~9月実績と10~12月見通しで一般トラック、特積みトラック、倉庫保管料の3モードがプラスとなった。一方、鉄道コンテナ、内航コンテナ・RORO船、国内航空7~9月実績と10~12月見通しのいずれもマイナスとなった。そのうち一般トラックは7~9月実績「1」から10~12月見通し「3」と2pt上昇、特積みトラックは7~9月実績「2」が10~12月見通し「3」と1pt上昇した。佐藤氏は「荷動きの悪さと燃油価格の低下を背景に運賃の下げ圧力が生じてもおかしくないが、そうならずに横ばいの傾向を示した。上がりはしないものの、ドライバーの賃金上昇や傭車費の上昇などを背景に、横ばいあるいは微増を保っているようだ」と指摘し、「トラック運賃はしばらくこの傾向が続く」と見込んだ。

物流コスト割合は足踏みも2ケタのプラス

売上高に対する物流コスト割合の動向では、7~9月実績は「プラス14」で4~6月実績と変わらずに横ばい。10~12月見通しは「プラス16」と2pt上昇した。コスト割合は横ばいとする荷主は、7~9月実績は52%、10~12月見通しは56%と微増した。また、3割の荷主は4~6月実績、7~9月実績と10~12見通しのいずれも増加を見込んでいた。
(2020年11月10日号)


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