メニュー

新型コロナでトラック輸送市況が悪化

2020.03.19

新型コロナウイルスの感染拡大でトラック輸送の市況が悪化している。「消費税増税」「米中貿易摩擦」「暖冬」により、例年に比べて荷動きが鈍いところに「新型コロナ」が加わった“四重苦”の状況で、トラックの稼働率が下がり、運収が大きく落ちている。他方、ドライバー不足が緩和されたことで、トラックを効率的に運用したり、トラック運送業者の主任クラスがドライバー職の兼務を外れる“余裕”も生まれているなど、「ポスト新型コロナ」に向けて前進する兆しもある。

輸送量激減、リーマンショック以上か

「リーマンショックよりひどい状況だ」――。京浜地区の海上コンテナ輸送業者の幹部は肩を落とす。新型コロナウイルスによる感染症が中国経済に打撃を与え、工場の操業再開の遅れ、個人消費の減速もあって輸出入が停滞。日本の主要港では、中国関連の貨物を中心にコンテナ貨物の輸送量が激減している。

輸送量の激減により「休車」を余儀なくされるケースもあり、売上げが落ち込んでいる。対中貿易依存度の高い大阪港では、15~20%程度物量が減ったことで、車両の稼働率が75%まで下がった事業者もある。「荷主からは輸入は戻りつつあると聞いているが、輸出はコロナ以外の要因もあって荷動きが鈍く、危機感が強い」という。

荷動きの悪化は海コン輸送に限ったことではない。求荷求車ネットワーク「WebKIT」の2月の求車登録件数は前年同月比で約4割減り、スポット運賃市況も前年割れが続いている。また、帝国データバンクによると、「運輸・倉庫」の2月の景気DIは前年比で14・3pt減と大幅に悪化し、新型コロナウイルスの感染拡大で「マイナスの影響がある」と見込む企業の割合が73%と業種別で最も高かった。

都心部を配送エリアとするトラック運送事業者に聞くと、「自粛ムード」の影響をダイレクトに受ける商材は物量が半分程度まで落ち込んでいるという。一方で、「本来、車をキャンセルしたいところだろうが、荷主によっては半分になった物量を従来の台数に振り分けてもらっている」と、直近まで続いていたトラック不足の〝トラウマ〟から一定の配慮も。一時的に積載率を落とすことでトラックの稼働台数が見かけ上、維持されているケースもあるようだ。

貨物量のリバウンドも予測、運賃は現行維持

需給の緩みにより、運賃市況にも影響が出始めている。ドライバー不足解消のための“原資”確保のため値上げ基調が続き、2月末には「標準的な運賃の告示制度」のタリフの原案も明らかになったところだが、一時的に値下げの動きも出てきた。荷主に「運賃はいくらでも合わせられるので仕事をください」と営業する例も見られるという。また、新年度に向けた契約運賃交渉では、一部に値下げの動きが出てきているほか、コロナショックの影響で交渉時期を後ろ倒しするケースも出ている。

一方で、トラック運送事業者が懸念しているのは、需要減の“反動”だ。ゴールデンウィークに向けて貨物量のリバウンドを見込み、「荷動きが低迷している間、ドライバー離れに拍車がかかったら、荷量が戻った時に対応できない――と荷主に説明し、現行の運賃水準を維持できるよう努めている」という事業者もいる。

需給のひっ迫がノーマルな状態に収束?

「トラックを確保できない」から「トラックが余っている」に反転している状況で、「余裕が生まれたことでスムーズな物流ができる」「トラックの待機時間が改善された」という声も聞こえてくる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が当初予測より長期化する見通しの中、「これまでの需給のひっ迫がノーマルな状態に収束していくのでは」との見方もある。
あるトラック運送事業者の経営者は「ドライバーがいなければ〝お手上げ〟するしかないが、トラックも人も余っているのだから打つ手はある。『1台休車し、3人で2台を稼働させる』など効率的に車両を運用すれば固定費を抑えられる。新年度以降、覚悟していた人件費の上昇についても緩和される可能性もある」と展望する。
(2020年3月19日号)


関連記事一覧