メニュー

【ズームアップ】五輪対策、食品物流はトラック大量確保へ

2020.02.20

東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)の物流対策として、食品関係の物流会社がトラックの大量確保に乗り出している。大会期間中は交通規制や渋滞による配送業務への大きな影響が予想され、ドライバーも集まりにくくなるため、一定の料金を保証して集車しているケースもあるようだ。元請けとしてあらかじめトラックを押さえておくことで傭車費上昇を極力回避する狙いだが、スポット運賃の高騰が確実視される中、いわば「仕入れはサブスクリプション、売値はダイナミックプライシング」というような運用も考えられる。

6割で「物流需要の増大」が課題に

東京2020大会(オリンピックが7月24日~8月9日、パラリンピックが8月25日~9月6日)の観客動員数は約1000万人とされ、大会期間中は選手や大会関係者等の道路利用により首都高速道路では 1日あたり約7万台の交通量が増加し、首都高速道路での渋滞の悪化や、都心に向かう一般道の渋滞発生が予想されている。

都では期間中の首都高の交通量30%削減を目指し、「2020TDM推進プロジェクト」を推進し、交通量抑制や交通量の分散化・平準化の取り組みへの“協力”を物流関係者に要請。しかし、流通経済大学のアンケートによれば物流事業者の6割が「物流需要の増大」を、7割が「ドライバーの確保」を課題として挙げている。

交通混雑や規制による配達の遅延など物流業務への影響が懸念される中、「輸出入のスケジュールを変更し、オリンピック期間中はモノを動かさないというのが対策のひとつ」(機械メーカー)という荷主がある一方で、食品、とくに飲料などは大会期間中の夏期に最需要期を迎える上に、五輪特需も見込まれ、「運ばない」という選択肢はない。

ドライバーが敬遠しスポット運賃高騰も?

こうした中、食品メーカーの物流を担当する物流会社は、大会に向けてトラックの確保に乗り出しているという。ある会社では例年のおよそ1・5倍のトラックを集める計画。期間中は渋滞や規制の影響で配送できないケースも考えられるため、「仕事ができても、できなくても、一定の料金を保証して車を集めている」(食品関係の物流関係者)という。

物流環境が通常とは大きく異なる大会期間中は、都心部の配送が敬遠されるなどドライバーの不足感が一層高まり、スポット運賃の高騰も予想される。事前に比較的好条件でトラックを集めておくことで、主要荷主の輸送を完遂するとともに、スポット傭車の使用を避け、コストの平準化を図れるメリットが見込まれる。

「『大会期間中は、物流コストが上がるのはやむを得ない』ということを経営層も織り込み済み」(荷主の物流担当者)と国民的イベントに際しての物流費への寛容な姿勢もうかがえ、運賃は上昇するとみられる。こうした中、一定のコストをかけて集車力を強化することによって各方面の需要に応えられる体制をつくれば、コストを上回るベネフィットが返ってくる可能性もある。
(2020年2月20日号)


関連記事一覧