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多摩大学サプライネットワーク・マネジメント研究所 所長兼教授  水嶋 康雅氏

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2009年8月4日3820号
多摩大学サプライネットワーク・マネジメント研究所 所長兼教授  水嶋 康雅氏 インタビュー
特別インタビュー  物流子会社の「経営論」を聞く
   「?物流はコアビジネスでない?という経営トップの考え方が間違いの第一歩になる」
   「物流子会社は3PLを目指せ。子会社が機能すればブラックボックス化が防げる」

 物流子会社はいま、大きな岐路に立っている。物流業務のアウトソーシングの進展などにより、子会社の存在意義が薄れてきており、廃止や売却といった事例も増えてきている。そこで、日本を代表するメーカー、ソニーの物流担当役員や物流子会社・ソニーロジスティックス(現ソニーサプライチェーンソリューション)の社長も経験し、現在は多摩大学のサプライネットワーク・マネジメント研究所の所長として「SNM戦略会議」などを主催する水嶋康雅氏に、実践を踏まえた物流子会社の課題や将来に向けた方向性を聞いてみた。

 ――物流子会社を取り巻く現状をどう見ていますか?
 
 水嶋 物流子会社の問題を考えると、結局のところ、親企業の経営者が物流をどう見ているかという問題に行き着く。メーカーをはじめとする日本の経営者はよく「物流はコアビジネスではない」という言い方をするが、これが間違いの第一歩だ。「物流はコアではない」という言い方の根っこには、物流をコストとしてしか見ていないという考え方がある。だが、必要なモノを必要な場所に必要な量を届けるという行為がなければ、商品は価値を現わすことができない。つまり、物流は商品の価値を構成する一部であり、モノの一部くらいに考えないといけないのに、日本の経営者はそこまで考えが及んでいないのが現状だ。例えば、米国のウォルマートのような企業はそうではない。ロジスティクスと商品を売るという行為がもっと一体化しており、ロジスティクスに対する力の入れ方が大半の日本企業とは大きく違っている。

 「物流はコアビジネスではない」という考え方は、その次の段階として「だから外に出すのが経営の常道だ」という経営判断を生みがちだが、ここにも大きな間違いが潜んでいる。物流を安易に外部の物流業者に任せてしまうことで、物流がブラックボックス化してしまう危険性がある。つまり、荷主企業の側に管理能力がなくなってしまうことで、いまの物流の仕組みが正しいのか、適正な値段なのかといった判断がつかなくなってしまう事態が生じてしまう恐れがある。かつて製造業の分野でも、例えば、基板への部品挿入などの下加工だけならまだしも、基板上のパターン設計まで、「コアではない」と言うもっともらしい理由をつけて、生産を下請けに任せ切りにしてしまったことで、本体が検証能力どころか製造のための設計能力まで失ってしまった時代があったが、それと同じようなことが物流でも起こりつつある。

 親会社の経営トップの中に「物流なんて・・・」という考えがある限り、その下にある物流子会社が存在価値を持つはずがないのは当然のことだろう。かつて、物流子会社に限らず子会社は全般的にリストラのための人材の受け皿という要素があり、親会社が?お荷物?として背負ってきたという一般的な傾向があった。それがここにきて、親会社に背負っていくだけの体力がなくなってきたために、「子会社をどうしよう」と大騒ぎしているというのが現在の状況だと思う。


 ――物流を安易に外注化することで、結果として自社の物流がブラックボックス化してしまうことの弊害はよく分かります。では、具体的にどのような点を改善していけばいいのでしょうか?

 水嶋 分かりやすくひとことで言えば「物流子会社は真の意味での3PLになれ」ということに尽きる。荷主企業も3PL的なアプローチができる子会社を持つか、そうでなければ物流をしっかり管理できる人材をどこかに確保する必要がある。3PL的なアプローチというのは、何も外の仕事をどんどん取ってきて外販比率を増やせということではなく、親会社の仕事に対しても3PL的に取り組むということだ。3PLというのは荷主とその商品の顧客にとって最適な物流システムを構築すると言う仕事を、責任を持って引き受けることであり、高度な企画能力と優れた管理能力が求められる。物流子会社が3PLとして機能していけば、物流のブラックボックス化も防ぐことができる。

 かつて、物流子会社は親のベースカーゴがあるために左団扇でやっていけた時代があった。言い方は悪いが、親の荷物を実運送業者に流して利ザヤを抜く単なる?ピンハネ業?だった会社も少なくなかった。ある会社では、IATA(国際航空運送協会)の航空貨物運賃を親会社に提示して満額を懐におさめていたところもあったようだ。もちろん、マーケットプライスはその半額以下だ。さすがにそこまでひどい子会社は生き残れない時代になったが、いまでも存在意義の薄い子会社は少なくない。その意味で「物流子会社不要論」は一面で正しいと言える。だが、注意しなければならないのは、ダメな物流子会社を生み出す背景には、親会社の「物流はコアではない」という考え方があるということであり、結局のところ親企業の経営トップの意識をどう改革していくかが課題となる。

 ――物流子会社を3PL事業者として育成していくために、親会社がしなければならないことは何でしょうか?

 水嶋 いきなり理論通りに成長していける子会社があるとは思えない。2、3年は眼をつぶって育てることも大事だ。最初は他よりコストが高いかも知れないが、毎年の事業計画をしっかりチェックして、3年後に一般の物流会社と伍してやっていけるだけの力をつけさせるくらいのスタンスも必要だろう。いきなり「明日から自分たちでやっていけ」ではうまくいかない。ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源をいかに配分するかも重要だ。親会社のトップが物流をどう考えるかで、当然、資源の配分も変わってくる。

 私事だが、ソニーは80年代に当時の大賀典雄社長が「これからはロジスティクスが大事だ」と社内で宣言した。その時、ソニー倉庫という子会社があったが、そこに人材を含めた経営資源を投入することになり、社名も「ソニーロジスティックス」に変えた。おそらくロジスティクスという社名にした日本で最初の会社だったと思う。それからしばらくして、私も物流を担当することになったが、ソニーの部長会などの場で事業部の責任者に対し「物流はこれから大事になるから、よく話を聞いてやってくれ」と言ってもらえたことで、調整がスムースになった。物流に限らずどんな仕事でもそうだが、トップのバックアップがあるのとないのとでは大きく違ってくる。


 ――物流子会社の外販についてはいかがでしょうか?

 水嶋 物流子会社は第一に親企業の物流をいかに効率化できるかだ。物流サービスは親が売っている商品の一部であり、その価値を購買者であるお客様に認めてもらうことがもっとも重要なことだ。だが、その一方で、親の仕事だけをやっていては「井の中の蛙」になってしまうため、外販も必要になってくる。外販に打って出ることで市場の動きを知ることができ、パートナー企業との連携が深まることも期待できる。そして何よりも、新規の仕事を獲得することで、自分たちの仕事が一般の物流マーケットに通用することの証明になり、そこで働く社員の誇りや自信にもつながる。これは裏を返せば、親会社の物流効率化にも貢献できていることを示すことでもある。ただ、親会社に売っている値段よりも安くやっていては意味がない。少なくとも親と同レベルかそれ以上の値段でサービスを提供するべきだろう。日立物流やアルプス物流は、物流子会社から出発して、いまや半分以上が親会社以外の仕事で占められている。いきなりそこまでのレベルに達することは難しいが、経営のやり方次第では物流子会社も物流マーケットで十分通用することを証明しているといえる。

 物流子会社もサービス業であることに変わりはない。他社と比較して仮に値段が同じなら、サービスは少なくとも同等かより良くなければならない。また、サービスが同じなら、値段は少なくとも同値か、より安くなければ企業として成り立たない。物流子会社だろうが、一般の物流企業だろうが、これが基本であり、これ以外に生き残る術はない。


【略歴/みずしま・やすまさ】 1959年東京外国語大学卒業。ニューヨーク大学経営大学院留学。66年ソニー?入社。ドイツ現地法人代表取締役、新潟ソーワ?代表取締役、?タムロン代表取締役社長、ソニー?人事開発グループ本部長、物流本部長、パーソナルビデオ事業本部長、コンスーマービデオ開発本部長、コンポーネントカンパニーエグゼクティブ・バイスプレジデント、プロキュアメントグループ部門長、物流並びに調達担当統括役員、ソニーロジスティックス?代表取締役社長、ソニー?取締役・執行役員上席常務などを歴任。


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