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JPエクスプレス 代表取締役会長 白金 郁夫氏

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2009年5月14日3797号
JPエクスプレス 代表取締役会長  白金 郁夫氏 インタビュー

「アクセスポイント増やすことで利便性を強化」「3年目の単年度黒字化めざす」
「空白地帯だった?中小口?をターゲットに。SDによる柔軟な料金交渉を」

郵便事業会社と日本通運が共同で設立した宅配便事業会社「JPエクスプレス」が4月からスタートした。新会社は当初、日通の宅配事業を承継し「ペリカン便」ブランドでサービスを行い、10 月に郵便事業会社から「ゆうパック」事業を引き継ぎ、新ブランドのもとで両事業を完全統合させる予定。
圧倒的なシェアを誇るヤマト、佐川に続く?第3極?の誕生は、「業界の活性化につながる」との期待も高い。だが、その一方、折からの景気悪化もあって宅配業界は成熟産業の色合いを一層強めており、「成長の余地は残されているのか」という不安の声も根強い。
新会社の事業戦略について代表取締役会長である白金 郁夫氏に聞いた――。

――景気低迷の逆風が吹いているが、初年度の計画は?

白金 いま見直しを進めている。当初は個数で年間3・3億個、収入で2000億円程度を目標に していたが、昨秋以降の景気低迷で運輸業界全体が厳しい経営環境にあり、宅配便のマーケットも縮 小傾向にある。スタートから1ヵ月が経ち、これから営業活動に本腰を入れていくが、その中でどれ だけ伸ばせるか、あるいは維持できるかを含めて、見直しの最中だ。また、親会社である郵便事業会 社が総務省に提出する事業計画の修正を行っており、それには当社が郵便会社に支払う各種手数料の 検討も含まれているため、収入だけでなく支出面の計画も変更される可能性がある。

――昨年度のペリカン便は取扱個数が前年割れとなった一方で、ゆうパックは若干のプラスを維持 しているが。

白金 ゆうパックの実績は「EXPACK(エクスパック)500」を含んだものであり、我々が承継 することになる通常の宅配便はそれほど増えていないのが実情だ。一方、4月から承継したペリカン 便は、構造的に事業所(企業)からの出荷が多いため、個人利用に比べて景気の冷え込みの影響を受 けやすい。今後、営業努力や新規サービスでカバーしていくが、足もとの状況はかなり厳しいと見て いる。

――10 月からゆうパック事業を承継して両社の宅配便事業を完全統合する予定だが、準備状況は?

白金 完全統合が10 月になる最大の理由はシステムの問題だ。ゆうパックはこれまで、郵便ネッ トワークの中のひとつの商品として、ネットワークや決済などを他の郵便サービスと一体的に行って きた。これをシステム的に分離するのに相当な時間がかかっている。また、新会社ではSD(サービ スドライバー)モデルを採用していくが、SDに配備していく情報端末の使い方などオペレーション の習熟にも一定の時間が必要だ。

――ゆうパックの後納制度はどうなるのか。

白金 完全統合を機に後納制度は廃止する。後納制度はもともと郵便が国の事業であったため?掛け売り?ができないことから編み出されたものだが、締めてみないと料金(割引率)が分からないこ となどもあり、利用者にとって使いづらい面があった。完全統合後はこの制度をやめ、SDがお客さ まとの交渉の中で柔軟に料金を設定できるようにしていく。JPエクスプレスのオペレーションシス テムは基本的に日通側のシステムをベースにしていくが、携帯端末も高機能化を予定しており、10 月 からの完全統合スタート時には同業他社を上回るシステムを構築できると考えている。

――ヤマト、佐川を追撃していく中で、JPエクスプレスの「強み」とは。

白金 当社の将来的な事業規模は約3000億円であるが、現在の宅配マーケットに占めるシェア は14〜15%。合計で8割近いシェアを持つ上位2社に較べ見劣りするのは事実だ。ただ、利用者が宅 配便に求める要素として料金、品質、利便性の三つがあるが、料金についてはもともとゆうパックは 業界最低水準であり、ペリカン便も4月からゆうパックのレベルに下げたことで一定の優位性がある。 課題は品質で、特にゆうパックの場合、これまでは郵便のネットワークを使っていたがゆえの制約が あった。例えば、集荷締切時間にしても郵便のレベルに合わせていたために他社と比較して早かった。 しかし、宅配専業会社として自前のネットワークで集荷配達することで、今後は一般の宅配便と較べ て遜色ないレベルのサービスを提供することが可能だ。料金は引き下げたままでサービスレベルを上 げるというペリカン便とゆうパック長所を活かしたサービス体制が構築できるようになる。

――利便性については。

白金 利便性、具体的にはアクセスポイントだが、これはもっとも重要な要素だと考えている。特 に若い人は身近な場所に好きな時間に荷物を受け取れるという利便性の高さを宅配便を選ぶ際のポイ ントに挙げることが多い。ゆうパックは全国のコンビニの約半分を押さえているのに加えて、郵便局 ネットワークを持っているという面で大きなアドバンテージがある。さらに今後は、台車で集配に回 るような小規模営業所を増やしていくほか、例えば地方のお土産物屋さんなどにもアクセスポイント を増やしていくことで、同業他社との差別化を図っていきたい。利便性を強化していくための新サー ビスも検討している。

――営業のターゲットとして「中小口」を挙げているが、その狙いは。

白金 日通はあらゆる物流サービスを提供する中のメニューのひとつとしてペリカン便があり、得 意先は大手企業が中心だった。一方、ゆうパックは国営サービスとしての信頼性や身近さから個人の 利用が多く、両社とも1日10〜20 個、月間で数百個程度の「中小口」は空白地帯になっていた。し かし、SDによる柔軟な料金設定など顧客ニーズに臨機応変に対応したサービスが提供できる下地が 整ってきたことで、今後は積極的に営業をかけていきたい。中小口市場は顧客数が多く、販売単価も 相対的に高いため、利益率の面からも営業を強化していく必要がある。

――通販市場の拡大で宅配各社は決済サービスの多様化を競っている。

白金 当然力を入れていく。完全統合が予定されている10 月以降早い段階でサービスを提供して いきたい。将来的にはゆうちょ銀行など日本郵政グループ全体での包括的なサービスを提供すること も考えていきたい。

――4月から名鉄運輸が宅配便をJPエクスプレスに差し込むようになったが、同業他社との提携 については。

白金 一般論として運送会社は宅配便をメニューのひとつとして持っていたい一方、ネットワーク を維持するほどの旨みはなくなっている傾向がある。名鉄運輸さんのケースはあくまでお客さんとい う立場で当社に配達を委託するというものだが、今後、他の事業者から我々のネットワークを活用し たいという話があれば積極的に対応していきたい。足らざるところを補い合ういい関係が構築できる と思う。

――事業開始3年目(2011年度)の単年度黒字化を目標にしている。

白金 いつまでも黒字化できないようでは事業を存続していく意味がない。宅配便を取り巻く事業 環境は厳しく、事業統合に伴う投資も大きな負担になっているが、早期にビジネスモデルを確立して 収益体制を強化していきたい。両社とも事業は赤字と言われているが、気持ちとしてはゼロからのス タートだ。従来の延長線上の取組みでは必ず失敗する。統合による規模のメリットを出していくとと もに、利便性の強化など新たな価値を生み出していくことで活路を見出したい。

――ゆうパック配達員の人件費が民間に較べ200万円ほど高いことがネックだという指摘もある。

白金 新会社では同業他社並みを考えている。郵便会社の場合、国営事業としての労働条件を引き ずっているのは確かだ。しかし、それでは競争下の宅配便事業はやっていけない。運送業界の水準に 見合ったものにしていくことが必要だ。ただ、SDモデルを確立していく中で、なるべく優秀な人材 を確保するためにもSD職を魅力あるものにしていくことも大事な戦略だ。当初は業界水準に設定す るが、その後は業績に応じた見直しも考えていくことになるだろう。

――統合後の新ブランド名は。

白金 これは郵便事業会社と日本通運の親会社同士が話し合って決める話。ただ、4月からJPエ クスプレスとしてペリカン便のブランドでサービスを開始したが、実際は料金を値下げするなど細か い見直しをしているにもかかわらず、ブランド名が変わっていないため利用者に「何も変わっていな い」という印象を与えている面がある。また、「JPエクスプレス」という社名に対する認知度もまだ 低く、配達先で玄関を開けてもらえないケースもあるようだ。新ブランド名は完全統合までに決定す るが、当面はJPエクスプレスの知名度や認知度を上げていくための取り組みも必要になる。

【略歴/しらかね・いくお】1951年6月24 日生まれ、57 歳。75 年東大法卒、同年郵政省(現・ 総務省)入省。99 年7月大臣官房主計課長、2000年6月信越郵政局長、02 年7月東海郵政局長、 03 年4月日本郵政公社東海支社長、05 年執行役員・郵便事業総本部IT本部長、07 年10 月郵便事 業会社専務執行役員(現職)、08 年6月JPエクスプレス代表取締役会長に就任。趣味は旅行。



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