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【AI・IoT】GROUNDと大和ハウスが「次世代型物流センター」共同開発

2017.06.29

物流を取り巻く環境が激変する中、我が国の物流設備やシステムはどうあるべきか? 「次世代型物流センター」として、来年3月末の竣工を目指す「DPL流山」(千葉県流山市)を大和ハウス工業と共同開発するGROUNDの宮田啓友社長に話をうかがった。

DPL流山の構想

大和ハウス工業が建設する物流施設に対して、当社がオープン型プラットフォームを提供します。そのプラットフォームは、ハードとソフトの2つの側面があります。ハード面ではロボットに適した環境を整備すること。例えば、倉庫内で保管ラックをピッキング作業者の手元へ自動移送する無人搬送ロボット「バトラー」は、床の精度が高くないと効率よく走行できません。まずは、ロボットが最適に運用できる施設作りを行います。

次にソフト面ですが、1つめはロボットのシェアリング、2つめは在庫の最適配置です。Eコマースでは需要が予測しにくく、商品がロングテール化しているため、商品をどこに置くかでバトラーの走行距離に影響が出ます。AIを使って解析することで“ロケーション変更”して、適切な商品配置となるような仕組みも開発しています。
ロボットの配置を決める上で、各荷主の予定を把握する必要があります。また、商品の配置を決めるためには、どの商品がどれだけ売れるかの計画といった情報も不可欠です。こうした需要予測は、極めて重要です。この分野もAIを使って情報解析し、需要予測するシステムを開発中です。

このような仕組みが、当社が企画・開発する“プラットフォーム”であり、これを標準としてDPL流山の入居者に提供していきます。

配車効率の向上を目指す

昨今、通販需要の急増やドライバー不足、再配達問題がクローズアップされ、ドローンや自動運転などが注目されています。その一方で、街中を走るトラックの積載率は50%前後といわれています。なぜ、このようなことが起きるのか? それはECの物流拠点が配送会社に対し、精度の高い出荷情報を渡せていなかったことが要因の1つです。

今後、このプラットフォームの運用がはじまると、配送効率を高めることに繋がると考えています。これまで、配送会社のドライバーや営業担当者が物流センターの出荷担当者に出荷数をヒアリングするというやり方が多く見られました。しかし、需要予測をすることで「来週の何曜日、何個の荷物が出る」といった具体的な数値の算出が可能になります。事前に出荷数が分かっていれば、適正なトラックの手配ができるようになります。配送効率の向上を実現するには、上流となる物流センターの計画の精度、情報の連携が求められますが、当社としてはこの仕組みづくりに力を注いでいます。

プラットフォームの提供方法ですが、物流センターに入居する際、自ら多額の資金を投じて設備投資するのが従来のやり方でした。しかし、次世代型物流センターでは、ロボットや最適化するためのシステムについて、最初に投資するのではなく、賃料の中に利用料として含まれているといった形を考えています。常にロボットやシステムを利用してもらい、最新の技術と情報などを提供することを目指しています。

物流センターの向かう先は?

国内では、各地で物流倉庫が建設されていて、最先端の機能を備えた新施設への誘致が活発です。延床面積10万平米超といった大型施設も増えてきました。このような新たな物流施設では、従来型の人中心のオペレーションではなく、ロボットを使った新しいソリューションで効率化を図ろうというニーズが高まっています。

一方、海外を見てみると、物流は労働集約型から装置産業にシフトしていて、ロボットを使った新しい技術開発が進んでいます。ある大手通販企業では年間で数千億円を投資するといった、ケタ違いの規模で物流変革に着手しています。多額の投資をして、ゼロから新しい物流システムの構築に取り組んでいるのが世界のトレンドです。こうした世界情勢を見ていくと、もはや小手先だけで物流問題を乗り切れる状況ではないことに気づかされます。

今後、さらに機械化やシステム化が進み、物流センターの庫内のイメージは一新されると思います。5年後には、庫内にはロボットが行き交う光景が普通になっているかもしれません。しかし、センター内の省人化・無人化が実現したとしても、配車効率を改善しないことには、ドライバー不足や再配達といった問題は抜本的な解決とはならないでしょう。

やはり、上流工程の変革は必須です。バトラーをはじめとしたロボットやAIの活用によるデータ解析でシステムを最適化し、精度の高い出荷情報を配送会社に提供する必要があります。まずはDPL流山で成功事例を築き上げたいと思います。

(2017年6月29日号)


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