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ズームアップ 宅配業界のサービス変更、通販市場への影響は?

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ズームアップ 宅配業界のサービス変更、通販市場への影響は?

 ヤマト運輸(本社・東京都中央区、長尾裕社長)が労働組合との協議の末、宅急便サービスの一部見直しを決めた。4月24日から、再配達の受付時間を従来の20時から1時間〜1時間20分前倒しするほか、6月には時間帯指定の「12時〜14時」を廃止して、「20時〜21時」枠を「19時〜21時」へ変更する。これに合わせて大口法人顧客とは取引内容の見直しを進め、既に一部の通販会社には8〜10%程の値上げ要請が寄せられているという。宅配会社の配送ネットワークに支えられて成長した通販業界は、今回のサービス変更をどう受け止めるのか。日本通信販売協会(JADMA)で長く調査員を務め、同協会の理事を引退後も複数の通販会社で顧問を任される、トランスコスモス・アナリティクスダイレクトマーケティング研究所の柿尾正之所長は「送料が上がれば通販会社の淘汰も起こり得る。通販会社は、より魅力ある商品づくりをしなくては生き残れないだろう」と示唆する。

 ●日本の通販業界にそもそも“送料無料”の概念はなかった?

 宅配料金の値上げやサービスの見直しに対し、通販業界では、概ね理解を示しているという。世論は宅配会社の窮状に同情的であり、消費者が受け入れている以上、通販業界が反発しては、逆に社会からの反感を買ってしまう。最終ユーザーである消費者を味方につけたことは非常に大きなポイントだ。折しも、電通社員の過労死問題などで「働き方改革」への注目が集まる中でのヤマト運輸の動きは「世間に理解を示してもらうには最良のタイミングだった」と柿尾氏は分析する。

 大口法人顧客の宅配料金見直しに伴い、通販業界に蔓延する「送料無料」という考え方の変化も予想されるが、「そもそも日本の通販会社に送料無料の発想はなかった」と同氏は説明する。2000年、「送料無料」を前面に打ち出すAmazonが黒船の如く登場し、市場競争の中で通販各社は同社を追いかけ、ネット通販を中心に「送料無料」の概念は浸透していった。「そこは通販業界としても間違いだった」と振り返る。

 現在、JADMA会員通販会社のうち完全送料無料を謳う会社は1割に満たず、多くは一定購入金額以上で送料を無料とする料金体系。当のAmazonも昨年4月から、購入金額2000円未満の注文では350円の送料を徴収している。今回、ヤマト運輸は社会に対して『荷物はタダで運ばれているわけではない』という事実を啓蒙したともいえるが、「これからは通販会社としてもその意識が必要かもしれない」と同氏は指摘する。

 一方で、実際の宅配料金値上げは通販業界にどう影響するのか――。まず、健康食品や化粧品に代表される通販商品を自社で製造・販売する通販会社では、原価率が比較的低く、ある程度のコストアップは吸収できると見られる。ただ、商品を自社で作らずに仕入れ販売する通販モデルの場合には、原価率が高い上に同業他社との価格競争もあって配送コストの上昇を販売単価に転嫁することが難しく、厳しい対応が迫られる。「こうした状況だからこそ、送料が掛かってでも欲しいと思えるようなオリジナリティのある商品づくりを、通販会社は改めて考えるべき時期に来ている」と呼びかける。

 ●夜間の配達時間帯指定変更は通販商品の購入障壁に? 再配達荷物のさらなる増加も?

 一定の理解を得る宅配料金の値上げに対し、配達時間帯指定については今回の施策の効果を疑問視する声もある。12〜14時の時間帯指定廃止は、終日家にいる高齢者や専業主婦が主要利用客層であるため前後の時間帯に利用を移行することで大きな問題はないと思われる。ただ、問題は20〜21時配達指定の変更だ。同時間帯指定を使うのは単身のワーカーや共働き世帯であり、19〜21時へと指定時間の枠を広げることで受け取りが困難になる可能性は大きい。「そこで、注文を躊躇(ちゅうちょ)するようになってしまうのでは」との懸念が通販会社の間にはあるようだ。同時に、宅配荷物のさらなる再配達増加につながるのではないかとの指摘もある。

 対策のひとつとして考えられるのが、受け取り方法の多様化。化粧品などの小物商品は投函型配送サービスを利用するほか、宅配ロッカーやコンビニエンスストアでの受け取り拡大が想定される。ただ、コンビニ店舗のバックヤードスペースには限りがあり、宅配ロッカーなども「誰が費用負担するのか」という議論は付きまとう。「状況によっては、宅配会社からのさらなる値上げ要請も想定される」との意識は通販業界にも既に見られる。他方で、宅配会社をはじめとした物流業界の労働力不足に対し、通販商品を購入者へ届ける『ラストワンマイル』機能の継続性を心配する声も出てきているという。

 ●Amazonはどこへ向かうのか――

 ヤマト運輸の宅急便荷物の2割を占める大口顧客Amazon。同社との交渉も注目を集めるが、「Amazonの最終的な狙いは、自社物流網の構築にある」と柿尾氏は見る。米国Amazon.comでは生鮮食品の即日配達サービス「Amazon Fresh」を展開しているが、同サービスでは配送を大手宅配会社に預けるのでなく、地域の運送会社をネットワーク化し、Amazonの制服を着たドライバーが商品を届けている。Amazon Freshは近々、日本でもサービス化が噂されているほか、わが国においても最近では「デリバリープロバイダ」と称して複数の物流会社をネットワーク化し、一部地域の配達を委託している。こうした動きを「物流の自社化への布石」と見る関係者も少なくない。

 現在の日本の宅配会社によるサービスレベルを維持できる物流ネットワークの構築には相当な時間と投資が必要と見られるが、圧倒的な物量を持つAmazonが、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便に追随する宅配キャリアとなる可能性は否定できない。「今は宅配会社に頼らざるを得ず様々な要求も取り急ぎは受け入れると思うが、今後の状況によっては自社化への動きを加速させるかもしれない」と柿尾氏は分析する。

 (2017年4月6日号)

 

 

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