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米国市場、日系メーカーの物流戦略は? カシオ/クボタ/タニタ

 1月に就任した米トランプ大統領は今後10年で米国の経済成長率を4%に高める目標を掲げ、法人税引き下げやインフラ投資の拡大を表明。労働者の所得増による個人消費拡大など景気の押し上げが期待される。一方、貿易においては「保護主義」を打ち出し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の離脱を正式に表明、今後、日本も2国間FTA(自由貿易協定)の交渉を求められる可能性もある。経済大国第1位の米国市場は日系メーカーにとっても最重要マーケットのひとつ。期待感と不透明さに揺れる米国市場における日系メーカーの物流戦略をレポートした。(掲載は社名50音順)

西海岸揚げ、シー&トラック輸送でリードタイム短縮=カシオ

 データプロジェクターの輸出では仙台港を活用


 ●米国では時計の販売実績が好調に推移
 1990年代、米国でスケートボードをする若者のストリート系ファッションが日本に逆輸入され、人気に火が着いたカシオの「G―SHOCK」。近年では、アナログの商品ラインアップ展開や百貨店、時計専門店などに流通を拡大し、世界各地で「ショック・ザ・ワールド」という大規模なプロモーションイベントを展開。2015年度の「G―SHOCK」の年間出荷数量は800万個と、いわゆる「G―SHOCK」ブームのピークの97年の600万個を上回っている。カシオ計算機(本社・東京都渋谷区、樫尾和宏社長)にとって米国は、時計のみならず、ハンディターミナルとデジタルカメラを除く主要品目を供給する重要マーケット。海上輸送比率を上げつつリードタイムを短縮するため、日本からの輸出では最寄り港を活用。ニュージャージー州ドーバーの倉庫向けの製品供給では、西海岸揚げのインターモーダル輸送を採用するほか、顧客直送を拡大している。

 カシオでは、海外重点市場である米国、欧州(ドイツ)、英国、中国に主要な現地販売会社を置き、売上高全体に占める米国の比率は約13%。時計、電卓、楽器、レジスター、プロジェクターと主要品目をCasio America, Inc.(カシオアメリカ)が販売しており、とくに時計の販売実績が好調に推移している。海外生産比率は85%で、金額ベースで中国の2工場が60%、日本(山形工場)が15%、残りがタイ工場を中心に東南アジアの製造委託工場。タイ工場は当初時計のみだったが、現在はその他製品も製造している。

 生産拠点から米国物流拠点への供給を物流部企画管理課が担当。米国での物流拠点は2拠点体制で、ドーバーのカシオアメリカに隣接した自前の倉庫は主に時計用。その他の製品はイリノイ州シカゴの倉庫(現地3PL倉庫、運営は自社)で取り扱っている。海外生産拠点から海上、航空輸送で商品を供給。各国で異なるインフラや季節要因による貨物増減などが輸送に影響を与えないよう、現地拠点および輸送業者各社と連携し、事前に対策を講じている。

 ●納期短縮のため、顧客倉庫への直送も
 国内生産比率は直近でやや上昇。2014年から、独自のレーザー&LEDハイブリッド光源技術を持つプロジェクターの生産を山形カシオ(山形県東根市)に順次切り替えた。これにより日本発の輸出が増加し、航空から海上輸送へのシフトを進める中で、より短いリードタイムを実現する最寄り港の活用を検討。従来、山形カシオ生産のプロジェクターは、海上貨物の場合、全量を青海物流センター(東京都江東区)経由で東京港から輸出していたが、15年度から仙台港からの輸出を開始した。

 現在、月間で40ftコンテナ2本程度を輸出している。仙台港と山形カシオの距離が近いため、仙台港のコンテナヤードカット日の間際まで生産した製品を船積みできる。例えば、山形カシオから青海物流センター経由で東京港から輸出する場合、「1日から15日までに生産した製品」しか積めなかったのが、仙台港の利用だと「1日から20日までに生産した製品」とより多く積めるようになる。国内の輸送距離、輸送コストの削減のほか、CO2については81%(15年度)削減を実現した。

 米国向け航空輸送の比率は約9%だが、スピードと回転率が要求される時計では50%を超える。海上輸送へのシフトを進めていく中で、よりリードタイムを短くできるルートを採用。カシオアメリカの提案により、ドーバーの倉庫への供給で、パナマ運河を経由する東海岸揚げではなく、西海岸揚げでシー&トラック輸送を利用することでリードタイムを短縮。運賃はアップするがリードタイム短縮のメリットの方が大きいと判断した。納期を短縮するため、大手流通の倉庫への直送も進めていく。

米国市場でシェア拡大に向け、物流の付加価値化に取り組む=クボタ

  物流改革を水平展開、ジョージア州でインランドデポ構想も



 ●米国は最大の市場、大型トラクタを投入
 米国市場に念願の大型トラクタを投入、世界最大の市場でさらなるシェアの拡大を目指すクボタ(本社・大阪市浪速区、木股昌俊社長)。機械部門の地域別売上比率が日本に次いで大きい米国では、近年、アジアのメーカーの参入により競争が激化。製品・サービスの差別化において物流の重要性が高まっている中、日本の物流改革を米国に水平展開していく。調達物流では、製品や部品のサプライチェーンを“こま切れ”に可視化することで、「クボタ流のJIT(ジャスト・イン・タイム)と適正在庫」を追求。その一環として、米国でインランドデポを活用した物流スキームも検討中だ。

 同社は1972年、米国にトラクタ販社を設立し、北米市場の開拓に着手。以降、クボタが得意とする小型トラクタや乗用芝刈機、ユーティリティビークル(UV=多目的四輪車)の製造・開発拠点、トラクタ装着用作業機器(インプルメント)の製造拠点を順次設立し、一部製品の現地生産体制を増強した。90年代からは中型トラクタの販売を伸ばし、米国でのトップシェアを確立。一方で韓国、中国、インドなどアジア諸国製の安価な製品との競争が激しくなる中、2013年にはジョージア州のインプルメント製造拠点の敷地内に新工場を設立し、中型トラクタについて現地での量産体制にシフトした。

 13年12月には、欧米市場をにらみ、欧州の畑作中心地であるフランス北部で大型トラクタ(エンジン出力130〜170馬力)の製造拠点を新設。15年から、クボタにとって創業以来初めてとなる大型トラクタ「M7001」シリーズの量産を開始した。全世界の大型農機市場の4割を占める米国でシェアをさらに拡大すべく、畑作用の大型トラクタ市場に参入したもの。現在、米国向けにはフランスの工場から大型トラクタを輸出しているが、需要地での現地生産も検討されている。小型機から大型機までフルラインナップ化し、農機業界の「グローバル・メジャー・ブランド」の確立を目指している。

 ●“自前主義”が物流の一貫したポリシー
 「当社は中長期的に米国を最大の市場と位置付け、シェアを拡大する戦略を掲げている。ただ、日本のメーカーとして初めて大型トラクタ市場に参入したことで、コンペティターは強い反応を示してきた。従来バッティングしなかったコンペティターが当社の得意とする市場に参入し、競争が激しくなっている。品質とコストで競争力のある製品を生産し、市場に投入することはもちろんだが、付加価値をつけ、製品の優位性を高める機能のひとつが物流だと考えている。最大の市場である米国だけでなく、全世界で物流の付加価値化に取り組まなければならない」と土本哲也機械ロジスティクスソリューション部長は話す。

 米国市場への供給は、当初は日本で生産した製品を輸出する“製品物流”がメインだったが、現地生産の拡大により、日本やアジアから部品を輸出する“部品物流”が増加。その分、細かい管理が必要になり、「物流の高いクオリティが求められる」と土本氏は説明する。「受注生産でない限り、サプライチェーンの各工程で在庫を持つことになるが、在庫はコストを生む。『ただ倉庫で保管する、ただ運ぶ』のではく、『クボタ流の在庫の持ち方、運び方』をコントロールしながら“落としどころ”をつくっていく」。荷主自らが物流のオペレーションをコントロールする“自前主義”がクボタの物流の一貫したポリシーだ。

 物流改革の一例が、国内で進めているコンテナのラウンドユース。関東、関西の製造拠点周辺にインランドデポを設けた狙いは、「輸入者とのコンテナラウンドユースにより輸送費を下げること」ではなく、「輸出の予見性を高めること」にあったという。港からコンテナをピックアップするのでは、港の渋滞によりその日のバンニングにコンテナ到着が間に合わないケースがある。インランドデポにあらかじめストックした空コンテナを調達するスキームだと、確実にコンテナが届き、ドレージ車両が到着する時間に合わせて速やかにバンニングを始められるなどムダのないスケジューリングが可能になる。

 ●サプライチェーンを“こま切れ”に可視化
 現在、取り組んでいるのが、サプライチェーンの“こま切れ”の可視化だ。まずは調達物流で「出荷の段階さらには部品ができあがる前段階から、それがいつ到着するかを細かくリアルタイムに見えるようにし、迅速な納期回答を可能にするシステムを構築する」。出荷前、出荷後のステータスを細かく可視化し、生産や販売部門が到着予定を随時把握できれば、在庫を余分に持つ必要がなくなる。「『間違いなくその部品が届くこと』を見える化すれば、在庫は確実に減らせる。リスクを考え、バッファを洋上在庫として持ったり、常陸那珂港のように長期間蔵置できるコンテナヤードにコンテナのまま在庫しておくことで、急な出荷にも対応できる」という。

 こうしたクボタの一連の物流改革を最大の市場である米国に水平展開する。現地の製造拠点と販社を物流面から支援する組織を立ち上げる方針。また、米国でクボタの輸出入コンテナの約6割が集まるジョージア州で、インランドデポを開設する構想があり、当初は現地の物流会社に運営を委託し、将来的には自営への移行も視野に入れている。インターモーダルサービスでは、鉄道ランプのDemmurage Free Timeの条件に合わせて製造拠点にコンテナが搬入されているが、「必要なタイミングにコンテナが到着するようコントロールしたい」として、日本同様、現地のトラックの手配を自前で行うことも検討している。

 「米国でやろうとしていることの基本的な考え方は日本と同じ」と土本氏。物流会社任せにせず、荷主主導で「トラック事業者と直接契約したり、船会社、さらには港湾管理者と直接話をする」ことで、互いにメリットがある施策を実現していく。トランプ政権の誕生で、生産・供給体制の変化も予想されるが、「物流はバックオフィスでもある。血液のように各事業部門に入り込み、全体の流れをつくりながら、常にボルト磨きを忘れず、流れが変わったときにすぐに対応できるように備えておく必要がある。調達物流だけでなく、販売物流も含めてクオリティを高め、今後10年間でクボタの物流を世界一にすることが目標だ」と語った。

日米FTAにらみ研究をさらに深化、システム化も検討=タニタ

  原産地証明、担当者任せにせずチームでシェア



 ●米国では業務用とEコマースに特化
 公的な医療保険がないため予防医療が課題となっている米国。「『健康をはかる』から『健康をつくる』へ」を経営理念とするタニタ(本社・東京都板橋区、谷田千里社長)では、国民の健康志向が強まる米国で、業務用とEコマースに特化した販売戦略を進めている。米トランプ大統領はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱を宣言し、TPP参加国とは2国間交渉に乗り出す構え。今後、日米2国間のFTA(自由貿易協定)締結の可能性が出てくる中で、アジア市場向けに先行的に取り組んでいる、輸入関税削減のためのFTAの研究をさらに深めていく考えだ。

 1988年に米国販社として「タニタアメリカ」をシカゴに設立。従来は、日本の卸的役割を果たす「セールスレップ」を通した量販店向け流通がメインだったが、8年前に経営の現地化を図ると同時に販売戦略を転換。現在は公的機関や米軍向けの業務用の販売と、Amazonとの提携による個人向けネット販売が2本柱となっている。

 「米国で健康を気遣うのは中間層以上。また、靴を脱いでハダシで体重計に乗る習慣がない」(営業戦略本部国際物流管理部貿易・物流主席コンサルタントの横山九一氏)など日本とは異なる市場環境にある中で、流通の見直しと体組成計など高額製品の販売により、現地販社の利益率は大きく改善している。

 全盛期に中国の東莞工場と秋田工場から40ftコンテナ換算で月間数十本程度米市場向けに輸出されていたが、販売戦略の見直しにより現在は週数本程度。北米航路の船腹のひっ迫でスペースが取りづらく、物量が少ないため、船社とのサービスコントラクトを結ぶのが難しくなっている現状がある。

 ●アジアでのEPAカバー率は8割

 タニタのアジア戦略のひとつが、FTA、EPA(経済連携協定)の活用。タイ、インドネシア、ベトナム、インド、フィリピン向けの輸出では浸透しつつあり、現在、中国を除くアジア地域への輸出におけるEPAカバー率は8割。アジアでの販売は伸びており、「関税が安くなればそれだけ現地で販売しやすくなる」と横山氏は指摘する。

 当初は、現地の輸入者の実務担当者もタニタの営業マンもEPAに関する知識がなく、利用促進のため横山氏自らがFTA、EPAを研究、香港現法の営業マンにレクチャーした。日本商工会議所から特定原産地証明書の発給を受けるための、原産地証明に関する作業については「チーム」で取り組んでいる。

 FTA、EPAの活用では原産地証明に関する業務量が増大し、証明を間違うというリスクも生じる。「原産地規則は協定ごとに異なり、“担当者任せ”でなく、チームでやらなければだめ。1人で抱え込んでしまうのでなく、チームでシェアすることで負担が減り、知識も共有できる」と話す。

 「FTA、EPAは貿易拡大の有効手段。2年前から、もし米国がTPPに批准しなくても2国間のFTAはあり得ると思っていた」と横山氏。日米FTAが現実化してきた際、輸出者等が原産品申告書を作成できる「自己申告制度」の導入も想定され、業務の効率化に向け原産地証明にかかる作業のシステム化も検討していく。  

 (2017年3月16日号)

 

 

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