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生産性向上の切り札――求荷求車システムの現在

2017.07.27

営業用トラックの平均積載率は約4割で、この20年間で約15ポイントも下がっている――。
ドライバー不足の深刻化に悩むトラック運送業界だが、その一方、往復ベースで“6割も空気を運んでいる”という事実は多くの課題をはらんでいる。トラックの積載率が低位にとどまっている背景には、多頻度小口化や時間指定配送の増加など、荷主ニーズの高度化によるものが少なくないが、それでも事業者サイドの努力で改善できる余地は多い。

星野良三・全日本トラック協会前会長は会長時代に「ドライバーのためにも、たくさんの荷物とたくさんのトラックを組み合わせて、実入りで走らせることが重要。それにより今の体制でも2~3割の輸送力は生み出せる」と語った。
そうした積載率や往復実車率の向上に欠かせないツールが「求荷求車システム」によるマッチングだ。システム自体は以前からあるが、最近では新規サービスの参入や大手事業者の資本提携なども進み、改めて生産性向上の“切り札”として脚光を浴びている。さらなるIT高度化やAI活用などで、システム自体の“進化”も進みつつある。

事業者、荷主にとって不可欠なインフラに

求荷求車システムといっても、システム会社などが運営主体となって会員を集めてマッチングする「オープン型」と、大手運送会社などが自社の協力運送会社や傭車先とのマッチングに利用される「クローズド型」に大きく分類される。

このうちオープン型では「WebKIT」「トラボックス」「ローカルネット」が“老舗”として長い運営実績を持つ。このうち「WebKIT」は全日本トラック協会と日本貨物運送事業協同組合連合会(日貨協連)が運営する最も公益性の高いシステム。特に輸送力不足が顕在化する繁忙期においては、スポット傭車や運送委託先の確保で重宝されるなど、事業者にとって不可欠な求荷求車サービスインフラとして機能している。

ヤマトHDが資本提携、プラットフォーム構築へ

オープン型では最近、ラクスルが運営する「ハコベル」や、Hacobuが運営する「ムーボ(MOVO)」など新たなサービスも続々と登場している。
このうち2015年12月から「ハコベル」を運営しているラクスルは7月、ヤマトホールディングスと資本提携した。ヤマトがラクスルの既存株主から株式を一部取得したもので、荷主・納品先企業と物流事業者の双方が抱える課題を同時に解決できるオープン型の物流プラットフォームの構築を目指していくことで合意した。

また、Hacobuが運営する「ムーボ」も、アスクルが出資しているほか、大和ハウス工業と業務提携するなど今後の事業拡大が期待されている。

独自展開のトランコム、中ロット需要を開拓へ

一方、求荷求車サービスを中核事業に据え、独自の展開を図っているのがトランコム。前期(2017年3月期)の年間成約件数は前年比7・2%増の124万件、1日の成約件数が約5000件と強固なプラットフォームを誇る。

その同社が新たな需要堀り起こしとして注力していくのが「中ロット貨物」の領域。同社のマッチング事業は4t車や10t車を中心とした幹線のチャーター輸送が中心だったが、恒川穣社長は「1パレット以上・チャーター未満の中ロット貨物は、特積み事業者も対応し切れておらず、業界内で“漂流”している。この分野でしっかりした仕組みを構築できれば大きな潜在需要がある」と語る。同社では今後、数年かけて中ロット市場の開拓を進め、求荷求車事業の新たな柱に育てていく。

さらにICT化による集車力の強化にも力を入れる。マッチング業務を担当しているアジャスターの業務を一部オンライン化することで、中小運送事業者が参画しやすい環境を整備していく。

同社では今期(18年3月期)における同事業の売上高を前期比7・2%増の782億2000万円、契約件数を13%増の141万件と見込んでいる。

日通もシステム構築へ隊列走行との連携視野に

クローズ型のシステムでも、マッチングシステムによる積載率の向上や配車効率化が進んでいる。ドライバー不足が深刻化し、傭車先の確保が難しくなるなかで、グループ内や協力会社を含めた“経済圏”の中で、いかに効率的に輸送力を活用できるかは各社にとって大きなテーマだ。

そうした中で、日本通運でもトラックマッチングのシステム化を進めていく。同社は今年5月の組織改正で新たに「ロジスティクスエンジニアリング戦略室(LE戦略室)」を設置し、物流新技術への対応を強化していく。その中のテーマのひとつになっているのがマッチングシステムの構築。LE戦略室を担当する秋田進・取締役常務執行役員は「仲介事業を行うというよりは、運送事業者としての業務を担いつつ、マッチングシステムを通じてより迅速かつ広範囲にニーズに応えていきたい。これまでアナログの世界で行っていた配車業務を先端技術を活用することで、より裾野を広げることが可能になる」と語る。将来的には「トラック隊列走行の技術と組み合わせながら、マッチング事業を展開することも視野に入れている」としている。

(2017年7月27日号)


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