メニュー

ニチガス、世界最大級LPガスハブ充填基地が始動

2021.03.23

日本瓦斯(ニチガス、本社・東京都渋谷区、和田眞治社長)は16日、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実装した世界最大規模のLPガスハブ充填基地である「夢の絆・川崎(写真)」(川崎市川崎区)の完成報告会を開催した。充填基地、デポステーション、自動検針ツール「スペース蛍」、業務システム「雲の宇宙船」が連動してリアルタイムにデータ連携することで「生産」と「消費」をつなぎ、人の作業を極小化し、完全なトレーサビリティによる高効率な物流システムが実現。同システムを他事業者にも開放し、「LPG託送」という新たな共創概念の発信基地となる。

輸入基地から片道5分、貯蔵タンクは最小限に

「夢の絆」の場内には独自のアルゴリズムを搭載した高性能カメラや生体認証セキュリティゲートによって、車両や人、容器の情報が全て自動認証でデータ化。これらのデータと消費者宅に設置された「スペース蛍」から送られてくるガス消費データ、物流拠点「デポステーション」内の容器在庫データがシステム連携し、AI解析によって最適な製造(充填)計画を算出する。

敷地面積は2万8700㎡。20tトレーラ78台分の駐車スペースを有し、充填能力は月間5万tで、一般的な充填所の約100倍となる、約200万世帯へのLPガス供給が行える。14連全自動回転充填機3基体制で稼働開始し、最大6基まで設置可能。検査能力は月間4万本。輸入基地からローリーで片道5分の立地にあるため、ローリーが何往復もでき、貯蔵タンクは30tが2基と最小限の設置となっている。

「トレーラーゲート」で容器入出庫管理を自動化

特徴のひとつが「新製造計画エンジン」。通常、ガス充填工場は翌日に充填するボンベの本数を計画するが、「夢の絆」ではデポステーション内のボンベ在庫、配送実績の情報、消費者宅に設置された「スペース蛍」から収集される正確なガス使用量データに基づき、AI解析によって、「いつ、どのデポステーションに何本のボンベを持っていけばよいか」を自動算出し、精緻化された計画を行える。

また、施設の入場口に14台の高性能カメラを設置し、ゲートを通過するトレーラに積載された最大240本程度のボンベに貼られたバーコードを、ボンベの高さや天候にかかわらず、夜間でも正確に読み取る。この「トレーラーゲート」の導入により容器の入出庫管理をすべて自動化。各デポステーションにも「トレーラーゲート」を配備し、入出庫が自動的にシステム内で管理されることで充填基地から最終的な廃棄までの容器トレーサビリティを実現する。

“競争”でなく、共に創り出す“共創”へ

トレーラから荷卸しされたボンベはレーンを流れ、高性能カメラで自動的にバーコードを読み取り、ボンベは認識されると瞬時に新製造計画エンジンによって、充填する充填機、配送先デポステーション、到達すべきストックヤードが決定される。各分岐点に合計20台の高性能カメラを設置し、ストックヤードまで到達する最短ルートを自動分岐ガイドとシステム連携することでコントロールする。

充填エリアと容器検査エリアがレーン上でつながっており、システム連携によって一括管理されているため、検査のための出荷と回収を行う必要がない。充填期限を迎えた容器は自動で認証されて検査所に流れ、容器検査工程に入り、検査が完了した容器は再び充填エリアに戻る。「ガス充填」と「容器検査」の工程を一体化し、オペレーションを自動化することによって圧倒的な業務オペレーションの効率化を実現した。

報告会で和田社長は同社が目指す“LPガス託送”という新しい共創概念について触れ、「これまで各社の容器が異なることで配送の効率化を阻害していた。これからは配送のリソースを確保できなくなり、個々に容器を保有する時代は終わらせ、容器を統一していきたい。競い合う“競争”でなく、共に創り出す“共創”を進めなければならない。ここは入口であり、一丁目一番地。これから我々は改革の道を歩き始める」と力強く語った。
(2021年3月23日号)


関連記事一覧