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【レポート】荷主の5割超がパレット利用を推進

2020.09.29

トラックドライバーの労働環境改善やトラック輸送の生産性向上による持続可能な物流を実現するため、荷主・物流事業者・行政・消費者が一体となって取り組む「ホワイト物流」推進運動。昨年3月に賛同する企業・団体の募集を開始し、今年6月末には大手企業や各地の主要企業を中心に賛同企業は1000社を超え、7月末現在、1033社を数える。賛同企業の3分の1超を占める荷主企業メーカーおよびメーカー系物流子会社362社の取り組みをみると、5割超が手荷役作業削減のためパレット利用に取り組み、4割が船舶や鉄道へのモーダルシフトに前向きな姿勢を示している。

機械荷役やロールボックス活用も

「ホワイト物流」推進運動に賛同する企業は、同運動事務局が推奨する取り組み事項に基づき、自社の改善事項を記載した自主行動宣言を提出。同宣言で項目別に分かれた取り組み内容を提示している。また、一部の企業では同運動事務局が推奨項目とした個別の取り組みは掲げていないものの、取引先や事業者と協力しながら、法令遵守への配慮や契約内容の明確化などに全社的に取り組むことにより、物流の改善に注力する意思を表明している。
荷主企業およびメーカーと物流子会社362社のうち、8割強の295社が「物流の改善提案と協力」を取り組み項目に挙げ、物流事業者と協議し、自社の物流課題の洗い出しを行い、事業者が提案する改善内容に対し、積極的に協力・連携して解決を図る意欲を示している。
「パレット等の活用」を挙げたのは、荷主全体の半数超に相当する189社で、手荷役作業の軽減のためパレットを活用した機械荷役やロールボックスの利用に取り組む。パレット化はコロナ禍での“非接触”にも対応するため、さらに加速する可能性がある。また、4割に当たる148社が「船舶・鉄道へのモーダルシフト」に取り組むとしている。

「リードタイム延長」、3割が前向き姿勢

商慣習の見直しなどソフト面の取り組みも進む。物流事業者の配車・運行に配慮することで負担軽減と効率化につなげる「リードタイムの延長」については、3割弱の99社が項目として掲げた。また、87社が「発荷主からの出荷情報の事前提供」を挙げ、73社が「出荷に合わせた生産・荷造等」などに前向きな姿勢を示す。
輸送コストに関しては、改正標準貨物自動車運送約款の浸透がうかがえる。運賃とそれ以外の作業にかかる料金の区別の明確化を図ることとし、荷主の3割が「運送契約の書面化の推進」(108社)を宣言。「運転以外の作業部分の分離」(67社)や高速道路料金の荷主が負担する「高速道路の利用」(67社)にも理解がみられる。
輸配送の生産性向上で最も多かったのが「集荷先や配送先の集約ほか」(63社)。長距離運行を短縮するための「幹線輸送部分と集荷配送部分の分離」(27社)のほか、「中継輸送の導入・活用」(7社)も挙げられた。推奨項目以外の独自の取り組みの中で目立ったのは「輸配送などの共同化」(41社)だった。
1度に大量に輸送できる「車両の大型化、フルトレーラ活用等」(6社)では、江崎グリコ、文化シヤッター、YKK AP、ケービーエスクボタなどが車両の大型化への取り組み姿勢を示し、赤城乳業はフルトレーラ、ホームロジスティクスはスワップボディコンテナ車を活用する方針だ。

標準化、製品サイズや梱包設計の変更も

ドライバーの待機時間には検品作業のため発生する時間が含まれていることが多い。伝票の統一や電子化、検品レスなど様々な省力化を図るためにも、卸や小売などサプライチェーン関係者を巻き込んだ「物流システムや資機材の標準化」(21社)の拡大も今後の大きなテーマとなりそうだ。
「物流効率の高い製品サイズや梱包の設計・標準化」は14社が挙げた。物流に適した製品サイズに配慮するのは北芝電機、東芝エネルギーシステムズ、トーホー工業、西芝電機、リコーなど。梱包の設計や標準化にはアサヒグループ食品、三陽商会、東芝、リンナイ、JFE物流などが取り組む。
安全やコンプライアンスへの関心も高まる。「異常気象時等の運行の中止・中断等」は半数の182社が実施を表明。また、4割超の154社が「荷役作業時の安全対策」に取り組む。コンプライアンスの観点から「契約の相手方を選定する際の法令遵守状況の考慮」(90社)、「働き方改革等に取り組む事業者の積極的活用」(36社)、「下請取引の適正化」(17社)も挙がった。
(2020年9月29日号)


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