メニュー

「GOAL」推進、TMSを宅配に次ぐ柱に= 佐川急便・本村正秀社長

2019.09.10

佐川急便(本社・京都市南区、本村正秀社長)は4日、東京都内で記者説明会を開催し、今年4月に就任した本村社長(写真)が重点事業戦略や今後の取り組み方針について語った。先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」によるソリューション提案の推進に加え、付加価値輸送サービスのTMS(Transportation Management System)を拡販し、宅配便に次ぐ新たな事業の柱にしていく考えを示した。

佐川急便が持つ〝強み〟を大事にしていく

会見冒頭、本村社長は2005年から約10年間、SGホールディングスグループを離れていた自身の経歴に触れ、「タクシー事業などを経験したが、従業員の団結力や真摯さなど、中にいるだけでは見えない佐川急便の持つ強みを感じた」と振り返り、「当社を含め宅配事業はベンチャーとして成長してきた。その遺伝子や精神は今も変わらないし、大事にしていきたい」と抱負を述べた。
重点戦略では、今期からスタートしたグループの中期経営計画「Second Stage 2021」の経営戦略のうち、佐川急便が主に担う項目について説明。「グループ総合力の結集による進化した物流ソリューションの提供」の重点施策である「GOAL体制の拡大及びアライアンスの強化」については、人員を重点的に強化していくほか、既存マーケットの事業拡大を図りつつ、新たな市場を開拓し、顧客のニーズに沿った物流ソリューションを提案する体制を整えていく。

「X-Frontierプロジェクト」で仕分け能力を16%向上

「経営資源の価値最大化による成長基盤の確立」では、「X-Frontierプロジェクトをはじめとしたネットワークの拡大」に取り組んでいく。東京都江東区新砂にグループ最大基規模の大型物流施設を建設する「X-Frontierプロジェクト」について本村社長は、「施設の1、2階は当社の中継センターとして運営するが、稼働後は当社全体の仕分け能力が理論上で16%向上する。効率的で高品質な輸送ネットワークを顧客に提供していくことができる」と強調。「現在はマテハン機器を施設の一部エリアに納入しているほか、仕分けソーターは高速な物を導入する予定だ」と語った。

「デジタル化の推進と最新技術の導入による効率化・顧客利便性の追求」では、ITやAIを利用した最新テクノロジーおよびビッグデータを活用し、業務効率をさらに向上させる。事例のひとつとして、国土地理協会の11桁コードを活用したよりきめ細かい住所情報で仕分け精度を高め、ドライバーの配達効率を高めていく。

「経営管理体制の一層の強化およびステークホルダーの満足度向上」では、社会を支える物流企業としてSDGs(持続可能な開発目標)の7つの目標を重点課題に据える。「安全安心の交通社会の実現では、小学校や保育園、高齢者施設等で交通安全教室を開催し、昨年は約740回、延べ7万3600人が参加した。環境配慮とエネルギーの観点からは、天然ガスやHV、EVの車両も導入している」と語った。

2020年3月期第1四半期のデリバリー事業については、前年同期と比べて増収となったものの、減益となった要因について「大型連休や天候不良、G20の影響があった上、平日稼働が昨年より3日間少なかった。しかし、これは計画通りであり、2Q以降は回復する見通しだ」と説明した。

19年度は働き方改革、TMSなどを強化

今年度に実施している主な取り組みとして、働き方改革と輸送インフラの強化、先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」、TMSの事例などを紹介。働き方改革では、時間外労働の抑制、パートナー企業との取引拡充、輸送インフラに伴う人件費増加への対応を強化。「これらを支える適正運賃の収受についても継続して取り組んでいく」と述べた。

「GOAL」の事例では、今月から熊本市で開業する大型複合施設「SAKURAMACHI Kumamoto」の館内物流管理業務を受託したほか、開業に合わせて特配カウンター設置し、館内利用客の手荷物一時預かりサービスなどを展開する。また、スマートインポートを用いた国際一貫物流では、ベトナム国内で生産されたアパレル商材を佐川急便のベトナム拠点で集約し、検品・検針や仕分け作業を実施。日本への商品到着後は仕分け作業が発生せず、即座に各店舗へ納品できるため、リードタイム短縮とコスト削減に貢献する。このほか、日立物流とは燃料電池バスの輸送を共同で行った。

TMSの事例では、トンネル工事に用いるコンクリートの輸送を手掛けたほか、今年7月には農業ベンチャー会社の農業総合研究所と連携。佐川急便の営業所を、生産者が農産物を持ち込む集荷場として活用し、スーパーなどへ輸送している。

セイノーHDとの連携「幹線輸送で可能性」

8月に発表したセイノーホールディングスとの業務連携については、「幹線輸送の積載効率を高めて無駄なく走らせる取り組みに関しては(協業の)可能性がある。また、地域によっては過疎化により事業運営が厳しいエリアもあるため、共同配送などのトライアルを実施し、状況を踏まえて今後を検討していきたい」と語った。
(2019年9月10日号)


関連記事一覧