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楽天が「ワンデリバリー」構想を本格化、流山と枚方に大型物流拠点

2018.07.24

楽天(本社・東京都世田谷区、三木谷浩史社長兼会長)は17日、包括的な物流サービスを提供する「ワンデリバリー」構想への取り組みを本格化させることを明らかにした。同日開かれた「楽天EXPO2018」では、三木谷氏ら同社経営陣が楽天市場出店者などを対象にその戦略を説明した。千葉県流山市と大阪府枚方市で大型物流拠点を開設するとともに、自社配送ネットワークを年内には東京23区に加えて関西にも拡大。楽天による物流事業の“再起動”に注目が集まる。

北海道から福岡まで10拠点体制へ

「ワンデリバリー」は楽天市場の出店店舗に対し、商品の注文から保管、配送に至る一気通貫の物流支援を行うサービス構想。具体的には、商品の保管および出荷を代行する「楽天スーパーロジスティクス」と、同社独自のラストワンマイル配送サービス「Rakuten-EXPRESS」をラインナップし、宅配運賃の値上げなどで通販事業の運営に苦慮する出店店舗を救済するとともに、注文から配達までのインターフェースを見直すことで、購入者の利便性向上にもつなげる。

「楽天スーパーロジスティクス」の拡大に向けては、同サービスを担う高機能型物流センター「楽天フルフィルメントセンター(RFC)」を全国10ヵ所に設置。庫内には省人化・自動化を追求した倉庫機器を導入するとともに、楽天での購買データやAI技術の活用による受注予測、在庫情報の連携を通じて最適な在庫配置行い、配送スピードの向上と倉庫作業コスト、配送コストの削減をめざす。

楽天スーパーロジスティクスを利用する出店店舗ではいずれかのRFC拠点に在庫を置くことになるが、将来的にはRFC間に幹線便を運行させて、出荷頻度の高い商品在庫を各消費地の近くに分散させるような仕組みも検討する。同サービスにおける配送については、必ずしも「Rakuten-EXPRESS」を利用するのではなく、ヤマト運輸や日本郵便、佐川急便など複数の宅配サービスから最適な業者を選択できるものとし、RFCで荷量集めや方面別仕分けを行うことで宅配会社とのワークシェアリングにも貢献する。

RFCは現在、千葉県市川市(2棟、計7・8万㎡)と兵庫県川西市(7・5万㎡)に拠点を持ち、直近では今月、市川市のプロロジスパーク市川Ⅲで1万2600㎡の拠点を開設する予定。その上で17日には新たに、千葉県流山市と大阪府枚方市で大型拠点を稼働する計画も発表。今後も、北海道、仙台、愛知、京都、岡山、福岡などで施設の開設を計画するとともに、楽天グループの直販サイト「楽天ブックス」や「Rakuten Direct」「Rakuten BRAND AVENUE」などの物流拠点もいずれかのRFCへ集約する方針にある。

独自の配送網、年内には関西へ展開

「Rakuten-EXPRESS」は、2016年11月に「楽天ブックス」の商品を対象に、東京都内8区から試験運用を開始した宅配サービス。現在は、楽天市場で日用品を販売する「Rakuten Direct」の商品まで対象を拡大し、東京23区を配達エリアにデポを3拠点構え、軽貨物便事業者などのトラックが1日70~80台ほど稼働している。同サービスでは今後、配送エリアを順次拡大し、年内には大阪24区を皮切りに、関西主要都市への配達を開始予定。これに先駆け、今年6月からは、玄関前やガスメーターなど、住宅敷地内への置き場所指定配達サービス「置き配」を開始している。

今後は楽天市場とのユーザーインターフェースを改良し、「楽天市場アプリ」を利用した宅配の事前通知機能の導入や、受取場所および日時指定、配達スピードの選択肢拡充、複数注文を一度でまとめて配達するなど、購入者にとって利便性の高い配送を実現する。実際の配送ネットワークは軽貨物便事業者を始めとする多様な企業と連携して、トラックのみならずバイク便や自転車、徒歩など幅広い可能性を検討する。

GLPの2施設で大型拠点を開設

今回、新設を発表したRFC2拠点は、いずれも日本GLPの開発物件の全フロアはもしくは一部を賃借して運用する予定。新施設内には楽天が培ってきた倉庫内オペレーションのノウハウを活用するとともに、最先端のマテリアルハンドリングシステムを導入して、運営の大幅な効率化・省人化に取り組む。

「RFC流山(仮称)」は、「GLP流山Ⅱ」(延床面積約9万6000㎡、地上4階建て)の全棟を賃借し、18年内に稼働する予定。常磐自動車道・流山ICから約1㎞の場所で、外環自動車道および首都高速自動車道経由で首都圏にも直結。国道16号にも約6㎞の好立地であり、首都圏広域をカバーする拠点として位置付ける。施設は免震倉庫で環境性能も優れ、千葉県内で人口増加率が最も高い流山市に位置することから雇用環境も整備されている。

「RFC枚方(仮称)」は、「GLP枚方Ⅲ」(11万9100㎡、地上5階建て)のうち7万6000㎡を賃借して、19年内の稼働を見込む。京都と大阪の交通を結ぶ要衡地に位置し、国道1号線が近くにあることから、京都・大阪地域のゲートウェイ機能を持つ内陸型物流拠点との位置づけ。高断熱性能のサンドイッチパネルの導入で、夏は涼しく冬は温かい快適な庫内温度を保ち、バックアップ電源・井水設備を採用して、断水・停電時におけるセキュリティー機能も充実している。

三木谷社長“肝入り”の物流事業

2010年にサービスをリリースしたものの、物流拠点増設による債務超過から、一旦は縮小した「楽天スーパーロジスティクス」。今回は、「ファーストマイルからラストワンマイルまで楽天が管理し、商品配達まで当社が関わる」と語る三木谷社長自らの発案とあり、力の入れ具合にも差が見られる。さらに、直販ビジネスの拡大によるベースカーゴの増加や宅配運賃の値上げといった周辺環境も変化している。一方で、サービス縮小時に物流人材の多くは同社から離れており、新たなネットワークを構築・運営できるヒューマン・リソースの強化が急務。相次いで開設される大型拠点を早期に満床とするには「フルフィルメント by Amazon」など同業他社に対する競争力も求められている。
(2018年7月24日号)


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